【1】出場停止、罰金、減俸の処分について

 「日本国民の模範たるべく努力することを誓約」(統一契約書第17条)したプロ野球選手が、本来、平穏であるべき真夜中の病院内で、酒に酔って警備員に全治2週間のケガをさせるなどのトラブルを起こすという「不品行」(野球協約第60条)を行ったことは、一般常識に照らしても断じて許されざる行為であり、当球団に寄せられたファンの声の大半も厳罰を求めるものでした。

 山口投手は7月11日未明に起こしたトラブルを一切、当球団に報告しませんでした。球団が病院に問い合わせてトラブルが傷害、器物損壊容疑事件であることを把握したのは7月18日になってからで、トラブルからすでに1週間が過ぎており、病院側や警備員の方の被害感情はきわめて強くなっていました。山口投手はこの日、ナゴヤドームでの中日戦の予告先発だったため、当球団は急きょ、山口投手の登板を回避。中日球団、セ・リーグ、NPB関係者らに多大な迷惑をかけました。球団の対応がなければ、刑事事件を起こした選手が何らけじめをつけないままグラウンドに上がる事態が出来するところでした。

 山口投手と警備員や病院との示談が成立したのは8月に入ってからです。被害届が取り下げられ、結果的に不起訴となりましたが、もし球団が山口投手のトラブルを把握するのがもっと遅れていたら、示談交渉はより難航し、形而上の処分はより厳しいものになっていたはずです。選手会の「対象選手の行った行為は、刑事事件として逮捕事案でもなく、既に被害者との示談も成立している事案です」との認識は甘すぎると言わざるをえません。

 過去の処分事例として、1980年に当時の近鉄の選手が暴力事件で1年間の出場停止と10%の減俸処分を受けた例、同年にロッテの選手が暴力事件で1か月の謹慎と3か月の減俸処分を受けた例、1998年に巨人の選手が主審にボールを投げつけ、8月からシーズン終了までの出場停止と4000万円の減俸処分を受けた例などを参考にし、総合的に考慮した結果、山口投手に対しては、

 ・8月18日から今シーズン終了まで(参稼期間最終日の11月30日まで)の出場停止

 ・事案の起きた7月11日から出場停止期間前日の8月17日までの間、1日につき参稼報酬の300分の1に相当する金額の罰金

 ・出場停止期間中の参稼報酬について、1日につき参稼報酬の300分の1に相当する金額の減額

 が相当であると判断しました。

 なお、当球団は2015年に発覚した所属選手による野球賭博事件の反省から、球団内に紀律委員会を設けるなど紀律徹底に向けた取り組みを進めていたところであり、山口投手の行為は球団への信頼をも著しく失墜させました。

 さらに、山口投手はFA権を行使して当球団に移籍した、先発ローテーションの一角を狙う大物投手として、広く野球ファンに名が知れ渡っており、山口投手の言動が青少年に与える影響力は大きく、今回の行為に対する責任はきわめて重いと言えます。

 選手会の「このような事案でのプロ野球界の前例、その他社会における懲戒処分実務に照らし、対象選手に対する総額1億円以上の金銭的ペナルティは明らかに重すぎる不当なものです」との認識は、多くの国民の受け止めとはかけ離れたものと言わざるを得ません。