新たな大砲が、覚醒の予感だ。日本ハム横尾俊建(としたけ)内野手(24)がオリックス19回戦(札幌ドーム)の2回、先制の4号ソロを放った。新人王候補のオリックス山岡から、左翼席中段へ運ぶ特大弾。ここ4試合で3本目と、期待の長距離砲が2年目の終盤に、いよいよ本格化してきた。おにぎりを握るパフォーマンスも板についてきたスラッガーに、消化試合はない。

 特大の「おにぎり弾」が、また飛び出した。横尾がフルスイングで、アーチを描いた。2回1死無走者。フルカウントから144キロ直球にロックオン。「完璧でした」。右手をバットから離す豪快なフォロースルーから、ゆっくりとダイヤモンドを回った。

 危機感しかなかったプロ野球人生を、切り開こうとしている。2年前の11月。日本ハムと仮契約を結んだが、大きな夢は見られなかった。「2年後、自分が(プロ野球界に)いるか分からないですから」。大卒で、くすぶり続ければ先は短い-。厳しい世界へ飛び込む前に自分を戒めた。

 慶大時代は、強い気持ちでプロへの扉を開いた。「結果を残しにいった」4年秋。東京6大学リーグ記録に並ぶ4試合連続本塁打をマークした。インパクト十分のアピールが実り、目標を実現。今は、次の目標へ覚悟を決めている。「野球人生として、ホームランにこだわっていきたいと思った」。1軍で結果を残せなかった1年目の昨オフに、自分を見つめ直した。ここ4試合で3本塁打。思いを体現し始めた。

 本塁打後のおにぎりを握るパフォーマンスも見慣れてきた。栗山監督も「覚悟を決めて、しっかり自分の特長を出す。必死さが出ている」と目を細め、続けて横尾を含めた若手選手に問うた。「あなたは何で、このチームで優勝するために貢献するのですか?」。シーズンは残り17試合。「おにぎり君」こと横尾が、勝負をかける2年目の秋。磨き続けたストロングポイントで、未来をたぐり寄せる。【木下大輔】

 ◆横尾のプロ成績 1年目の昨季は出場10試合(先発3試合=三塁)で17打数2安打3三振、打点0打率1割1分8厘。今季は出場33試合(先発17試合=左翼7試合、一塁5試合、二塁3試合、DH2試合)で75打数17安打4本塁打7打点、打率2割2分7厘。