楽天が塩見貴洋投手(29)の好投で“仮想CS第1ラウンド”を制した。ソフトバンクとの3連戦初戦で、6回途中まで1失点の粘投。3勝目を挙げ、勝ち進めばクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで対戦する強力打線を封じた。この1勝でチームは4季ぶりのシーズン勝ち越しも決定。今日24日に勝つか引き分ければ、3位以上とCS進出が確定する。

 塩見はいつも通りだった。7月27日以降、7戦全敗だったソフトバンク戦の連敗を止めた左腕はケロリとした顔で言った。「勝ってなかったんですか? 知らなかったです」。ヒーローインタビューを終えた後も、変わらずひょうひょうとしていた。

 余計なことは気にしない。そんなスタンスが悲壮な空気を断ち切ったのかもしれない。前カードの21日オリックス戦。勝てば2位西武に1ゲーム差と肉薄する場面で、勝ち越した直後の8回に岸が逆転3ランを許した。岸も、野手も、崩れ落ちた。これ以上西武に離されるわけにはいかない。しかも相手は王者ソフトバンク。その初戦先発を前に、塩見の言葉に重圧は感じられなかった。

 「(負けは)143試合ある中の1試合。シーズンを通して1、2試合あることです」。「カード頭とか、2位でCSっていうのもあまり考えない」。一貫しているのは「僕は僕の仕事をやる」という姿勢。生命線のカーブで緩急をつけ、カウントを整え、淡々と打ち取る。そこに集中し、5回まで単打1本に抑え込んだ。自身もホークス戦は14年9月24日を最後に5試合を投げて0勝3敗と、白星から遠ざかっていたが、苦手を意識しない強さで個人の連敗も止めた。

 残り14試合を残して71勝目とし、チームは4年ぶりのシーズン勝ち越しが決定。24日に引き分け以上ならCS進出が確定する。ファイナルまで進めば立ちはだかる強敵を、1度たたいた意味は大きい。梨田監督は「投打がかみ合えば貯金できるし、かみ合わないと10連敗するのが野球のこわさ。今日は塩見がゲームをつくってくれた」とたたえた。あと1勝。連勝で今日、Aクラスを決めにかかる。【鎌田良美】