最後に、出た。ロッテ井口資仁内野手(42)が引退試合となった日本ハム25回戦(ZOZOマリン)で、同点の2号2ランを放った。1-3の9回無死一塁で、増井の149キロをバックスクリーン右横に放り込んだ。土壇場で追い付き、延長12回のサヨナラ勝ちにつなげた。20年前のデビュー戦で満塁弾を放った男が、ラストゲームでも鮮烈な1発。日米21年間の現役生活を

最高の形で締めくくった。

 サヨナラ打を打ったわけじゃないのに、井口はびしょぬれにされた。延長12回1死二、三塁。「勝ったら井口さんに水をかけよう」。ベンチで清田や吉田のひそひそ声が聞こえてきた。鈴木が右前打を放つのを見て「まずい」と逃げた。だが、すぐに水が飛んでくる。二塁付近で、もみくちゃ。みんな特別ユニホームの背番号「6」。誰が誰だか分からないが、うれしい。「最後に、こんな勝ち方。みんな任せたぞ」。最高の気分だった。

 求めてきた当たりが、劇的勝利につながった。2点を追う9回無死一塁、増井の149キロをバックスクリーン右横へ。土壇場で、代名詞の中堅から右方向への1発が飛び出した。「2軍で、あの打球を求めてやってきた。自分やみんなの思いが伝わってフェンスを越えた。まだまだやれると思う半面、すっきり辞められます」と穏やかに言った。

 背中を見て育った男が、背中を見せる男になった。プロ入りした97年。ダイエーには球界を代表するスター、秋山(前ソフトバンク監督)がいた。「俺の背中を見ろ、と。憧れました。自分もそうなりたい。僕は秋山さんになりたかった」。それから20年。球界最年長となり、当時の秋山と同じ立場になった。特にこの1カ月は、2まわり近く年下の若手と汗を流した。球拾い、グラウンド整備も一緒にやった。聞かれたことは何でも答えた。彼らの悩みを知った。「自分の財産です」。視野が広がった。

 新監督就任が決定的となっている。今後については「今はゆっくり休めて。これからじっくり考えたい」としたが、球界やファンに恩返しの気持ちが強い。引退スピーチでは、チームメートに「マリンにチャンピオンフラッグを」と呼び掛け「選手のみなさん、期待しています」と言った。これからは指揮官として、強いロッテを見せていく。【古川真弥】