広島緒方孝市監督(48)が24日の中日戦でスタメンを大きく入れ替え、勝ちパターンの投手を休ませる大胆采配を見せた。勝敗にこだわりながらも、先を見据えた選手用兵。試合は今季8度目のサヨナラ負けを喫したが、クライマックスシリーズ突破の先にある日本一に向け、残り3試合も結果と競争を求めていく。

 左翼土生の後方へのダイブもむなしく、ナゴヤドーム左翼線付近で中日藤井の打球が跳ねた。広島ナインは肩を落としてグラウンドを後にした。今季8度目のサヨナラ負け。だが緒方監督は淡々としていた。「休ませるものは休ませる。最初から決めていた」。勝率5割で迎えたナゴヤドーム最終戦の勝敗ではなく、この先に待つクライマックスシリーズ、日本シリーズへ向けた戦いと位置づけていた。

 名古屋移動翌日の試合で、試合後再び広島移動だったこの日は、スタメンから菊池と松山を外した。ベテラン新井や安部もベンチスタート。2番には野間、4番にはバティスタがそれぞれ初めて入った。6回までは中日先発笠原の前にチャンスすら作れなかったが、7回は下位打線から3安打で満塁。田中が内角球を右肘に受ける死球で先制点を奪うと、2番野間が冷静に四球を選び、追加点を奪った。

 先を見据えた指揮官の方針は、野村の2年連続2桁勝利がかかった試合でもブレなかった。「広輔が体を張って勝ち越すことができて、逃げ切りたいという思いがあった」。そう振り返りながらも、勝ちパターンの一岡、ジャクソン、中崎は休ませた。2点リードの7回からは九里、ブレイシアを投入。2-2の9回は若い高橋樹をマウンドに送った。主戦の連投を避け、短期決戦で使える選手の見極めに充てた。

 優勝を決めても、負けていい試合はない。ただ、結果以上に求めるものはある。「登板する投手すべてが(クライマックスシリーズへ向けた)評価となる」。残り試合は調整の場であり、競争の場でもある。投手だけでなく、野手も同じ。緒方広島に消化試合などない。敗戦後の指揮官の語気がそれを物語っていた。残り3試合も、悲願の日本一へ向けたプロセスとしなければいけない。【前原淳】