クライマックスシリーズ(CS)進出確定お預けも、2位王手ならずも、虎にCSへの武器が増えた。本拠地甲子園に3位DeNAを迎えての一戦。CSで対戦の可能性がある相手に惜敗したが、先発岩貞祐太投手(26)が1軍復帰登板で6回5安打2失点。復調を印象づける内容で、CS先発候補に力強く名乗りを上げた。

 岩貞がたくましくなって帰ってきた。2回以降の0行進が、初回の失点のもったいなさを物語る。1回に宮崎の適時二塁打などで2点を失ったが、直球に力強さが戻ってきた。カットボール、スライダーも本来のキレをみせた。6回5安打2失点。結果をみれば10敗目を喫したが、屈辱にまみれた姿ではなかった。

 岩貞 (2回以降は)粘っていかないといけなかった。しっかり腕を振って粘れたと思います。

 逆境からはい上がってきた。8月8日の巨人戦。4回6失点でKO負け。金本監督から試合中に東京から大阪への「強制送還」を命じられた。そこから1カ月半。ファームでは福原育成コーチと直球の質を上げようと二人三脚でもがいた。体の開き、腕の振り方…。基本から見直した。投球練習ではブルペンを使わず、より実戦に近い感覚を持つため、グラウンドのマウンドを使った。地道に歩み続け、1軍復帰戦でCS先発候補に名乗りを上げた。

 現在の先発投手事情を考慮すると、CS布陣は右足骨折からメッセンジャーが復帰できるかどうかによって大きく変わる。秋山は決定的で、能見も有力候補。だが、岩貞はDeNAとの相性がよく、甲子園での同カードでは通算防御率1・29を誇る。この日の内容でDeNAと秋の決戦で争う場合は、先発の一角としての可能性も浮上した。もっとも、今日25日には岩田が先発予定。現時点では順位も確定しておらず、相手を含め、CSローテが確定するのは先の話だが、いずれにせよファイナルステージを見据えれば、最低5人は必要。その1枚の候補として、岩貞の名が挙がってきたのは間違いない。

 3回に先頭打者の出塁を許した後、筒香、ロペス、宮崎と主軸斬り。初回に二塁打された筒香と宮崎へのリベンジも果たした。金本監督も「ボールは良かったですね。初回の筒香の当たりも宮崎の当たりも、打った方を褒めるしかないと思う。良かったと思いますよ」。CS前哨戦のような一戦で、岩貞が復調を印象づけたのは確かだ。【山川智之】

 ▼岩貞はDeNA戦で通算9試合に登板して5勝4敗、防御率2・29。今年も0勝2敗ながら防御率1・93だ。甲子園では、4試合で2勝2敗とはいえ、28イニングを投げ自責点4、通算防御率は1・29と相性のよさを誇っている。