唯一のピンチも冷静だった。8回2死二塁。西武野上亮磨投手(30)は代打田中賢をフォークで空振り三振に仕留め、捕手岡田と拳を合わせた。「丁寧に投げることだけ心掛けた。チームにとっても個人的にも、いい勝ちだったと思う」。三塁を踏ませず、8回を4安打無失点。13年に並ぶ自己最多タイの11勝目を決めた。

 手応えはシーズン開幕前に感じていた。1月の熊本での自主トレ初日。キャッチボールの1球目だった。スピンの利いた直球が寒空の中、きれいに伸びた。「リリースポイントも腕の振りも、しっくりきた。今年はいけそうな気がします」と笑った。予感通り、1年間ローテーションを守りきった。今季24戦目のシーズン最終登板も初投げと同じキレのある直球が支えた。

 その真っすぐがあるからこそ、緩急と落差が生きた。昨季の最終戦から投げ始めたフォークで5奪三振。「しっかり使えるようになって、その分チェンジアップも生かせるようになった」。チェンジアップはシーズン中に投げ方を変更。手のひらではじく感覚から「窓を拭くような感じにして。この方が腕を振れるんです」。継続性と変化をいとわない柔軟性の両立。投球回も144回となり、規定投球回に到達した。

 楽天とのゲーム差は3に広がり、今日2日からの楽天戦に2連勝または1勝1分けで2位が確定する。辻監督は「向こうも必死だと思うけど、うちも必死で戦う。満を持して(先発予定の)十亀と菊池に任せたい」と引き締めた。【佐竹実】