<セ・クライマックスシリーズ・ファイナルステージ:広島0-1DeNA>◇第3戦◇20日◇マツダスタジアム

 最後まで流れがDeNAの方に行っている試合だった。9回、広島の先頭打者バティスタの三ゴロも、宮崎が実にうまくさばいた。抜けていれば分からなかったが、あれで完全に決まった。前日の敗戦後はまだ広島優位と言っていたが、この日の結果でもう五分になったと言っていい。

 もちろん広島にとっては、ここからがスタートだ、という気持ちでいい。天候が気になるが、長くてもあと3試合。短期決戦中の短期決戦になったわけで、あとは「勝ちたい」という気持ちが強い方が勝ち残る。

 とにかくDeNA先発の井納がよかった。1回から8割以上も変化球を続けるので、これは途中で真っすぐ主体に変える作戦かな、と思って見ていた。ところが結局、最後までそのスタイルで押し切ってしまう。

 これは先発投手の仕事である長いイニングを投げるということより、とにかく相手を抑えにかかるということだったんだな、と理解した。井納は阪神とのファーストステージでも登板しており、その経験が生きたのではないか。

 フォークボールに限っても、ボクがイメージしていたのはワンバウンドになるぐらい角度のあるものだった。しかし、この日はチェンジアップのような感じもする変化だった。今季途中からそういうフォークも投げているようで、広島打線がどう思ったかは分からないが、イメージと違っていたのは印象的だ。

 両軍通じての1得点も井納の打撃によるもの。理由は知らないが、井納は投手にもかかわらず打席でホームベースの近くに立つ。当然、対戦する投手は内角に投げていく。ボクも昨年CSで投げ合った時、井納の内角にツーシームを投げたことがある。ジョンソンも内角を突いていたが、やはり投手心理で当ててはいけないという気持ちがあるのか、最後は甘く入ったところをうまく打たれた。

 広島打線はバント失敗、盗塁失敗、さらに8回の菊池の併殺打など、持ち味である細かい試合運びで本来とは違うプレーが出てしまった。これはもったいないとしか言いようがない。

 それでもジョンソンの出来は悪くなかったし、救援陣もこの流れの中、全員、無失点でよく投げたと思う。最後はビハインドの場面で中崎が投げたが、これは当然で、展開によってはイニングまたぎをしてもいいぐらいだと思っていた。何度も言うが、ここから短期決戦が始まるという気持ちで向かっていってほしい。

(元広島投手)