「強肩」で相手の足技を封じる。「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」の侍ジャパンにオーバーエージ枠で選ばれたソフトバンク甲斐拓也捕手(25)の最大の武器は「肩」。育成出身ながら日本一チームの正捕手となり、正確なスローイングで投手を何度も救った。盗塁阻止に必要な3つの極意を明かした。

 甲斐は強肩の一芸で、はい上がってきた。10年育成ドラフト6位から、7年かけて正捕手の座をつかんだ。「みなさん、強肩、強肩って言ってくれるんですけど、自分では強いとは思わない。僕より遠くへ投げる人はたくさんいますし、プロに入って強いと思ったことはないですね」。甲斐は笑って「強肩」を否定した。

 遠投は115メートル。「僕は(二塁までなど)その距離をしっかりと強く投げようとしている」。バズーカ、キャノン砲といったイメージより、正確なレーザー銃のイメージが近いのかもしれない。甲斐が明かした送球の極意は「<1>正確性<2>優しさ<3>スピード」だった。

 <1>正確性 今年のオープン戦から一塁走者が出ると、投手がセットポジションに入る時に1度、二塁に入る内野手がタッチしやすい右手前に目のピントを合わせ、その後、投手にピントを合わせるようにした。頭の中に二塁の残像が残っているため、目標へ正確に投げられる。

 <2>優しさ 初めてシーズンを通じて1軍でプレーした今季、夏場以降は疲れから体が自分のイメージ通り動かず、早く投げようとしてフォームがバラバラに。慌てず、優しく丁寧に投げたほうがしっかり投げられる。下半身主導で、頭がブレないよう意識。

 <3>スピード 1・90~1・95秒だと速いと言われる二塁送球。甲斐は1・8秒台で最高タイムは「今年のロッテ戦で荻野さんを刺した時の1・71秒」と言う。投手の球をミットの中で止めず「ボールの勢いをつかって、流れで」ボールを握る。

 そして、公称170センチの小柄な体も武器にする。「僕は小さいし手足も短い。だから低い位置、最短距離で送球できる。(身長が)高けりゃいいってもんじゃないんですよ」。今シーズンの盗塁阻止率はリーグ3位の3割2分4厘。だが、数字以上に相手チームが甲斐の肩を警戒して足技を仕掛けてこなくなった。「侍でも一塁や三塁でも積極的にけん制球投げますよ」。序盤に自慢の肩を見せ、ライバルの足技封じでも貢献する。【石橋隆雄】