アキレス腱(けん)断裂は最高のケガでした。阪神西岡剛内野手(33)が8日、兵庫・西宮市内の球団事務所で契約交渉に臨み、今季の9000万円から1500万円減の年俸7500万円でサインした。選手生命を左右しかねなかった昨年のアクシデントを、野球ができる喜びに「気付けた」と前向きに消化。ケガの功名とするべく、来季の逆襲を誓った。(金額は推定)

 無数のフラッシュを浴びる西岡の顔に、悲愴(ひそう)感はなかった。「契約してもらったことに非常に感謝をしてます。アキレス腱(けん)が切れたことは最高のケガです」。野球ができる喜びを、ユニホームを着ている間に「気付けた」としてケガの功名を強調。「もう、己との戦いなんでね。非常に楽しみです」と来季へ向けて意気込んだ。

 昨年7月に左アキレス腱を断裂した。およそ1年間、リハビリ生活を余儀なくされた。そんな大ケガから復活し、もう怖いモノなどないという。「1度引退しようと決めたことがある。1度は野球人生が自分の中で終わって、縫い合わせて野球をやっているわけですから」。今季は懸命にリハビリに努め、7月17日広島戦で1軍に帰ってきた。「確実に強くなった。アキレス腱が切れる前よりは体がキレるようになっている」。肉体的な進化も口にした。

 不完全燃焼の今季は32試合出場で打率2割2分8厘に終わり、野手最年長として秋季キャンプに参加した。若手と一緒に汗を流し、阪神では出場経験のない遊撃を守る姿もあった。「野球人生を振り返ってみると、レギュラーを取りにいってる若いときの、ポジションを取りに行く野球が一番楽しかった。今置かれている立場が似ている。隙があるポジションをどんどん狙っていきます。(若手にも)すべてで勝つ気持ちです」。来季を見据えたその表情に、曇りはなかった。【真柴健】