広島のアドゥワ誠投手(19)が開幕1軍に前進した。沖縄キャンプの26日、実戦形式のシート打撃に登板。田中、菊池、丸、鈴木といった主力を相手に2回6人切りの完全投球を披露し、首脳陣も高評価を与えた。ナチュラルに動く直球とチェンジアップが武器の高卒2年目右腕。昨年のファーム防御率10・36という「大穴候補」が急成長を見せている。

 アドゥワがまた評価を上げた。シート打撃に登板直後、さっそくカープが誇る「タナキクマル」と対戦。田中を遊ゴロ、菊池を一ゴロ、丸を遊ゴロとすべてゴロアウトに打ち取った。次の回も下水流、鈴木を遊ゴロ。坂倉は空振り三振と完全ピッチ。父がナイジェリア人の長身右腕は、心地よさそうに汗をぬぐった。

 「手ごたえはあります。変化する球が効果的で、球数も少なくいけた」。27球のアピールショー。最速は147キロを計測した。特に鈴木に対しては、チェンジアップを決め球に使った。右投手が右打者に投じるのは危険性が増すとされる球種。ただ、19歳の若武者は「左打者が立ってるイメージで投げている」と恐れを知らない。

 畝投手コーチも「評価できるね。チェンジアップがいい。あとは実績を積んでくれたら。長いイニング、短いイニング、いろんなところで使える」とたたえた。先発やロング救援など首脳陣からすれば使い勝手は良さそう。他投手の状況しだいで先発ローテに割って入る可能性も出てきた。

 チェンジアップ以外にも、直球はナチュラルに動く。いわゆるムービングファストボール。本人も変化の理由に「自分でも分からない」と苦笑いする。1軍登板なし。昨年ファームでも9試合で0勝2敗と未勝利に終わったが、終盤の好調さを買われて秋季キャンプメンバーに選出された。

 この春も紅白戦を含む実戦3試合で計8回3失点。前回22日の韓国・KIA戦では無失点に抑えた。そしてキャンプ終盤に再び株を上げた。「課題も見つかり、いいところもあった。実戦が増えるので、結果を残していきたい」。緒方監督が掲げた若手投手のサバイバルレースで、今日27日に打ち上げのキャンプ完走は間違いなし。よりシビアになる開幕1軍争いを、若い力と勢いで勝ち取りたい。【大池和幸】