特大の吉兆弾だ。巨人阿部慎之助内野手(38)がヤクルトとのオープン戦で“今季1号”を放った。2回1死、ブキャナンの直球を右翼スタンド上段まで運んだ。自身オープン戦2戦目での1発は、シーズン33本塁打を放った07年に次ぐ2番目のスピード弾。沖縄・那覇キャンプ中にDeNA筒香から譲り受けたバットを操り、右足の上げ方も変えるなど試行を重ねる。チームも対外試合6戦目で初勝利し、開幕に向けて弾みをつけた。

 阿部が放った打球はフェンスだけでなく、巨人ファンの頭上も越えた。2回1死。ヤクルト・ブキャナンの146キロ、真ん中高め直球を完璧に捉えた。鋭いスイングが生み出した滞空時間約6秒の放物線は右翼スタンド上段に着弾。ファンのほとんどが見上げた推定飛距離130メートルの今季1号先制ソロを「強い真っすぐをしっかり打ち返すことができて良かったです」と振り返った。

 吉兆のスピード弾だ。自身2戦目のオープン戦、通算3打席目での本塁打を「阿部史上」2番目の早さでマークした。最速だった07年3月1日のオープン戦日本ハム戦(札幌ドーム)と同じ右翼へソロ。同年はシーズン33本塁打を量産した。調整の順調さを示す特大弾に「元気にオープン戦を迎えられた。これを継続して、しっかり体調を整えてやっていきたい」とうなずいた。

 打席でにぎったのは侍ジャパンで4番に座るDeNA筒香から譲り受けたバットだった。自身の物よりも約50グラム軽く、わずかに短い。先端寄りにヘッドがある打棒での1発に「いいんじゃない。打ったから。しっかり振り抜けた」。打撃フォームも微調整した。速球派のブキャナンに対応するため、右足の上げ幅を抑えた。140キロ台後半の直球を捉えるため「足を上げていたら間に合わない」とタイミングの取り方を早めた。今季は投手の2段モーションも解禁され、間の取り方が重要となるが「2段モーションぽいのもOK」と対策に抜かりはない。

 若手との定位置争いを自身の向上への糧にする。岡本ら若手の台頭も「若い子よりはたくさん場数を踏ませてもらっている。プレーでそういうのを見せられたらいい」と、積み上げてきた経験と技術で存在感を誇示する。史上19人目となる400本塁打まで残り12本。38歳のベテランが本拠地・東京ドームで幸先良く、一撃発進した。【島根純】