楽天内田靖人内野手(22)は、羨望(せんぼう)のまなざしで見続けた東京ドームの打席に入った。0-0の2回1死走者なしで、茨城・常総学院時代に高校日本代表で一緒だった同学年の田口との対決。「先に1軍で活躍している。何とか打ちたかった」と興奮を抑え、狙いを高めに設定した。2球で追い込まれたが、そこから4球連続でファウル。低めを捨て、見極め、カウント2-2からの9球目。甘いスライダーを完璧に捉え、狙い通りに右翼へ先制アーチを描いた。

 福島・いわき市で育った幼少期。テレビをつけると、いつも巨人戦が中継されていた。「逆に巨人以外の試合は見たことがなかった」。同級生も巨人ファンばかりだった。そんな中で、心をわしづかみにされたのが、通算413本塁打の小久保裕紀(前侍ジャパン監督)。「とにかく打っている姿が格好良かった。ホームランっていいなって。自分もいつかこんな風になりたいって」。プロ1号は16年6月の東京ドームでの巨人戦だった。前日23日にもマシソンから1発。幼いころの思いを体現している。

 これでオープン戦でチームトップの4号、打率は12球団トップの4割1分5厘、打点では同3位の12打点。まさにジャイアント級の活躍で、初の開幕1軍をほぼ手中に収める。梨田監督を「うれしい悩み。選択肢は増える」と言わしめた。大砲と期待される5年目。母敬子さんの前で185センチ、103キロの巨体を揺らし、集まった子どもたちの視線をくぎ付けにした。【栗田尚樹】