シンデレラボーイの誕生だ。阪神ドラフト2位の高橋遥人投手(22)が、リーグ2連覇中の広島打線を7回2安打無失点に抑え、チームを今季初の単独首位に導いた。球団新人では1959年(昭34)の村山実以来59年ぶり、左腕では2リーグ分立後史上初となる甲子園初登板&初先発&初勝利。猛虎史を塗り替えたゴールデンルーキーを金本知憲監督(50)も大絶賛だ。

 スピンの利いたボールがうなった。丸、安部ら左打者の内角をえぐる直球を投げ込んだ。「ストライクゾーンに思いっきり投げ込めばファウルになるんじゃないかと思った」。磨いた直球が甲子園で走った。

 プロ初登板初先発は7回2安打無失点。84球で無四球のデビュー戦を飾り「あっという間だった。とにかく楽しかった。100点あげてもいいんじゃないかなって思います」と、お立ち台では満点宣言だ。

 春季キャンプは2軍スタートだったが、1月末にブルペン投球を見た金本監督が「アレ、打てないと思うよ」と大絶賛した逸材だ。伸び上がる直球の原点は、幼少期から鍛えた下半身にある。「小学生のときに1回だけ4位になって…。悔しかったんで、あとは全部3番以内。ほとんどが1位でした」。2月のマラソン大会が近づくと気分がソワソワした。「中、高では、サッカー部の人たちがすごく速くて…。勝てなくて『くそ~!』って。どうしても勝ちたかったですね」。強豪ぞろいの静岡で全国選手権に出場するレベルの選手たちと、7~8キロを競い合う。同じクラスにはJリーグを目指す選手もいた。競技は違えど、いつかはプロの世界へ-。競争意識の高さが自身のモチベーションを上げていった。

 金本監督は8回の続投について「僕は正直行きたかったんですけどね(笑い)」とニンマリ。直球に強いイメージのある広島打線に二塁すら踏ませず「全部良かったと思います」と褒めたが「まだまだ今日は力を出し切っていないんじゃないかなと思いますね。真っすぐを待っているところに真っすぐを投げて押し込める投手でないと、なかなか1軍では勝てない。そういう投手に、これから進歩、成長してほしい」とさらなる期待を込めた。

 新人投手の甲子園での初登板初勝利は59年村山実以来59年ぶり。左肩の状態のこともあり、1度登録を抹消されることが濃厚だが、頼れる新戦力が加わった。今季初の単独首位を呼び寄せた左腕は記念球をさっとポケットにしまい込み、甲子園をあとにした。【真柴健】