4月30日、東京ドームでの巨人戦。ヤクルトは1-11と大敗し、同一カード3連敗を喫した。そんな中でも、今季のテーマに掲げる「執念」は失っていなかった。

 10点ビハインドの8回2死、象徴的なシーンが訪れた。巨人岡本に左翼への二塁打を許した直後、三塁側ベンチの小川淳司監督は「リクエスト」を球審に要求した。岡本の二塁へのスライディングより、山田哲のタッチの方が早かったのではないかとの見解だった。

 通常、監督がリクエストを要求した場合、球場内が沸くケースが目立つ。だが、この時は8回で10点差をつけられていたという展開もあって、観客のリアクションは薄かった。だが、ヤクルトベンチはワンプレーの判定にも妥協せず、毅然(きぜん)と権利を行使し、結果を待った。リプレー検証の結果、判定は覆らずセーフ。それでも、春季キャンプから言い続けてきた「1球にかける執念」「最後まで戦う執念」を体現している場面だった。

 それまでにもプレーに「執念」がうかがえていた。5回にリリーフ陣が打ち込まれて7失点し、リードを10点に広げられた直後の6回、先頭打者坂口が二ゴロで一塁を全力で駆け抜けた。完敗ムードが漂い始めていた中、この日1番に起用されたベテランが、プレーで仲間を鼓舞していた。

 今季2度目の4連敗を喫した試合後、宮本慎也ヘッドコーチは「選手は精いっぱいやっていると思います。点差が開いても坂口が全力疾走をしたり、みんなやってくれている。ベンチを含めて、いい方向にと思っている。いい方向に向くように、僕ら首脳陣は知恵を出しあって。(投打が)かみ合うようにするのが僕らの仕事。悪い流れが続いているので断ち切っていきたい」と振り返った。昨季96敗の悔しさは、だれも忘れていない。今日から5月。本拠地・神宮6連戦で、たぎらせている執念を勝利につなげていく。【ヤクルト担当 浜本卓也】