阪神福留は軽くバットを投げて、ゆっくり歩き出した。2点を追う4回無死一、二塁。DeNA飯塚の初球をジャストミート。打球は、猛烈な勢いでバックスクリーンへ。電光掲示板下に直撃し、跳ね返ってグラウンドに落ちた。7号決勝3ラン。「ああだこうだ考えずに、最初から思い切っていこうと。ここ最近の中では完璧。(飛距離は)だいぶ風に助けられました」。左翼スタンドの大歓声を合図に、ゆっくりと走り出した。

 ここぞで打つ。これが主将の存在価値だ。直前の無死一塁で2番植田のバントの打球を捕手嶺井が二塁へ悪送球の失策。もらったチャンスで、一振り。主導権は完全に阪神に移った。チームは今季最多の17安打を放ち、14年8月5日ヤクルト戦で20点を取って以来の16得点と快勝。連勝で借金を4に減らし、DeNAをかわして4位に浮上。「せっかく昨日、今日といい流れをつくったので、このまま明日勝てるように頑張ります」。頼れる主将が引っ張り、虎の逆襲が始まる。

 ▼阪神が1試合9二塁打。1試合に9本以上の二塁打は西武が15年5月13日の日本ハム戦で9本打って以来、プロ野球13度目(1リーグ時代1度、セ5度、パ7度)。阪神は50年8月3日(対西日本)に9本、85年9月10日(対大洋)にセ・リーグ最多の10本を放ったのに次いで球団史上33年ぶり3度目。プロ野球記録は巨人が48年、楽天が13年にマークした各11本。