広島安部友裕内野手(29)が決勝打を含む4安打、3盗塁の活躍で勝利に貢献した。今季1度も勝てていなかったDeNA先発ウィーランドに対し、5月6日ヤクルト戦(神宮)以来の5番起用に応えた。1回の先制打で勢いづくと、塁上をかき回して2得点。チームはサビエル・バティスタ外野手(26)と田中広輔内野手(29)に2本の満塁弾が飛び出すなど、合計10得点で快勝した。

 中堅にフラフラと上がった打球がDeNA梶谷の前にポトリと落ちると、一塁ベース上の安部に笑みがはじけた。自身初の1試合4安打の固め打ちで、打率を約2カ月ぶりに2割台に乗せた。さらに足でも初の1試合3盗塁で塁上をかき回し、2度ホームを踏んだ。

 「(後半戦から)また開幕戦の気持ちでいる。1回打ち砕かれているので。取り返すつもりでやりたい」

 今季一番の充実感をにじませた。DeNAウィーランドに5番で先発出場。5月6日以来の中軸起用に1打席目から応えた。2死から迎えた一、二塁。追い込まれながら外角球をうまくバットに乗せて中堅にはじき返した。先制打で打線を勢いづけると、この日のバットは打ち出の小づち状態。振れば安打、1四球も選んだ。さらに出塁すれば、果敢にスタートを切り3つの二盗を成功させた。得点を挙げたイニングすべてに絡む働きだった。

 昨季はリーグ4位の打率3割1分を残しながら、今季は大不振で出場機会が激減。2軍降格も味わった。出番が減った5月下旬には、高い集中力を維持するため試合前練習からユニホームを着用して気持ちを高ぶらせることもあった。蒸し暑さから額に大粒の汗を光らせても「暑い」とは言わず「涼しい」と強がりを見せる。「覇気」と言い続け、グラウンドでは弱音は吐かないが、今季の大不振にはグラウンドを離れると態度に表れることもあった。この日、ようやく笑顔が戻った。

 笑顔とともに復調気配を見せる安部に、緒方監督も「昨日からいい仕事をしてくれている。しっかり頑張ってもらおう、ここから」と期待する。その期待に裏切ってきた分だけ、安部の闘志も燃えたぎる。「前半戦仕事をしていないので、後半戦はチームのために仕事をする」。今季初のお立ち台で誓った。試合はバティスタと田中の満塁弾2発も飛び出し10得点の快勝。Vロードとともに、安部の逆襲がここから始まる。【前原淳】