夏は強い! 甲子園V腕の中日小笠原慎之介投手(20)が、28日の巨人戦でプロ初完封勝利を飾った。勢いのある直球に、チェンジアップやカーブなどの変化球も決まった。3回以降は無安打に抑える快投で5勝目。東海大相模の先輩・巨人菅野と3度目の対戦で初めて投げ勝った。開幕投手を務めた期待の左腕が成長の跡を残した。

 20歳の左腕がエースへの階段をひとつ上がった。最後の打者を右飛に打ち取り、小笠原は両手を突き上げた。136球を投げ、巨人打線を3安打に抑えた。プロ3年目で初完封を飾り、マウンド上で笑みをこぼした。「ホッとしています。とにかく1人ずつ投げようと思っていた。最後はどの形であれ、試合を終われたのはよかった」。前夜は巨人山口俊にノーヒットノーランを許した。嫌な雰囲気を一掃する快投だった。

 「偉大な先輩」という巨人菅野との対決は今回で3度目だった。過去2度はいずれも相手より早く降板し、敗れた。「絶対にロースコアになると思っていた」と気合を入れた。捕手の武山と「インコースを使って、押していこう」と話し合った。チェンジアップがさえ、カーブ、スライダーも巧みに交ぜた。最後まで集中力を切らさず、球界を代表する右腕に初めて投げ勝った。「まだ僕は1勝2敗で負け越している。1戦でも早く近づけるように頑張りたい」と言った。

 将来のエースへ、英才教育を施されてきた。今季は開幕投手の大役を初めて務めた。しかし波に乗れず、1勝5敗と黒星が先行。5月18日の阪神戦で1点ビハインドの6回で降板。104球の球数だったが、次の回まで続投できなかった。この姿勢に森監督から苦言を呈された。「(味方が)1点取ってくれたら、負けが消える。勝ちがつくこともある。100球、6回で疲れている。そんな投手を俺は使いたくない」。この試合後、2軍降格で出直した。プロ意識をたたき込まれ、はい上がった。

 小笠原の快投は最下位に沈むチームにとって、明るい材料だ。森監督は「(136球を)投げられたことを見せてくれたのは、うれしい。1つ乗り越えてくれて、一人前の投手になっていくのかな」と喜んだ。それでも左腕に浮かれた様子はない。自身3連勝で5勝目。負け越しは「1」になった。「自分の借金を返して、乗っていけるように」。夏の甲子園優勝投手からエースに成長していくための、大きな1勝だった。【田口真一郎】