ヤクルトが、名脇役の活躍で奇跡の大逆転勝利を飾った。延長11回、上田剛史外野手(29)が人生初のサヨナラ本塁打となる3ランで試合を決めた。9回裏には代打武内晋一内野手(34)の2ラン、約3月ぶりに先発した大引啓次内野手(34)の適時打などで追い付く驚異的な粘りを発揮。チームは連敗を3で止め、5割に復帰。クライマックスシリーズ(CS)進出へ大きな1勝を手にした。

鳴り物を使った応援もできなくなった午後10時39分。上田の一振りが激闘に決着をつけた。延長11回2死一、二塁、カウント2-0から中日8番手又吉の3球目、真ん中に甘く入った135キロのスライダーを捉えた。振り抜いた瞬間、右拳を突き上げて走った。ヤクルトファンの待つ右翼席へ、人生初のサヨナラ本塁打。「抜けたとは思ったけど、入るとは思わなかった。最高です!」と興奮気味に振り返った。小川監督も「本当にすごい。奇跡のようなゲームだった」と選手をたたえた。

上田は代打の切り札として期待されながら結果の出ない時期もあった。それでも毎朝の早出練習を欠かさなかった。宮本ヘッドコーチをはじめ、常に向き合ってくれる存在がいた。「今まで歯がゆい思いだった。それでもみんなが教えてくれて、今日の結果につながった」と感謝した。

名脇役がしっかり仕事を果たした。6点差で迎えた9回無死一塁、今季2打席目の武内が2ランを放ち、反撃のムードをつくった。4年ぶりの本塁打だった。さらに2死一塁、大引の二塁打で同点に追いついた。武内は今季はずっと2軍生活。苦しい時に支えにしていた言葉は、小川監督がシーズン当初から言っていた「執念」だった。「自分も諦めないで、やろうと思っていた。正直、ほっとしました」と笑みがこぼれた。6月7日ソフトバンク戦以来、約3カ月ぶりにスタメンに名を連ねた大引は2回に2号ソロ。「自分の打撃をしようと思っていた。台風の風にも押されました」と話した。

首位広島に3連敗を喫し、立ちこめていた重苦しい雰囲気を一変させた。特に1日、2日の試合ではどちらも序盤に失点を許し、試合の流れをつかめていなかった。この日も6点差。それでもベンチでは青木を中心に「これから、これから」と声が出ていた。最後まで粘ってつかんだ勝利。指揮官は「みんながよく食らいついてくれた」と目を細めた。【保坂恭子】