52日ぶりの白星だ。日本ハム上沢直之投手(24)が、17日のオリックス23回戦(札幌ドーム)で7回6安打2失点の粘投をみせ、チームトップの11勝目を挙げた。北海道を襲った地震発生直後の8日楽天戦は、3回9失点と悔しい敗戦を喫したが、本拠地マウンドで雪辱を果たした。今季の対オリックスは4戦全勝。チームの連敗を「2」でストップさせた。

心の声が出た。ヒーローインタビュー後、報道陣に囲まれた上沢がつぶやいた。「ほっとしました」。7試合ぶりの勝利にお立ち台では、感情がわき出てくる場面もあった。「とにかく結果を出したいと思っていた。長い期間勝てずにつらかったですけど、11勝目を挙げることができたのでよかったです」。表情に安堵(あんど)感が広がった。

我慢のマウンドだった。3回に先制され、なお1死満塁では併殺打でしのいだ。6回は無死から連続二塁打で追加点を許したが、後続を断ち、最少失点で切り抜けた。味方が逆転した直後の7回は3者凡退。「あそこをしっかり3人で終わることによって、チームの流れが完全にこっちにくるかなという意識があった」。7月27日オリックス戦以来の勝利をたぐり寄せた。

前回登板の雪辱を期していた。北海道で発生した地震後、初の試合となった8日楽天戦(楽天生命パーク)では、3本塁打を浴びるなど3回8安打9失点。「ふがいない結果に終わって悔しかった」。地震の影響でいつも通りの調整ができない中、北海道を勇気づける「特別な登板」と意気込んだが、結果を残せなかった。

試合翌日、栗山監督から「今後の人生に生きてくる試合だったと俺は思っている」と声を掛けられた。指揮官の言葉は胸に響いた。上沢は「環境に応じられる人が強いと思うし、限られた環境で投げなきゃいけない」。エース級のシーズンを送る右腕が一流投手への糧を得て、チーム最多11勝目につなげた。

この日の朝、球場へ向かう前、札幌市内の合宿所に来ていたファンの少女から4つ葉のクローバーを手渡された。「うれしかったですね。勝てるかなと思いました」。幸せの象徴とされるアイテムが、白星から遠ざかり不安だった心を落ち着かせてくれた。「ここから波に乗っていけるように頑張りたい」。上沢の右腕がチームの上昇気流をつくり出す。【山崎純一】

▼上沢が7回2失点に抑え、今季の対オリックスは4戦4勝、防御率2・89となった。カード別で4勝は対ソフトバンクに並び最多で、11勝のうち8勝を両球団から挙げている。西武、ロッテ、阪神に各1勝で、同一リーグで楽天だけは4登板で未勝利。通算では28勝目、オリックスからは10勝目。