余力十分なエースが、チームを土俵際に残した。巨人菅野智之投手(28)が自己最多の今季6度目の完封で13勝目を挙げた。ヤクルト打線を5安打に封じ「最高の結果。下位を出した状態で、上位へ回さなかったことが良かった」。チームの連敗を2で止め、4位DeNAとゲーム差なしの3位にとどまらせた。

最後は力で押した。9回、2安打で1死一、二塁。「勘弁してほしかった。あんな試練が待っているとは…」と苦笑したが「1点とられたら意味がない。完封にこだわって投げた」。村上を148キロの高め直球で空振り三振。続く西浦も149キロの直球で中飛に打ち取った。序盤からスライダー中心に組み立てたが、終盤で大胆に攻めきった。

勝負どころで勝ちきるために、1つの決断をした。コーチ陣と相談し、例年成績が落ちる夏前の交流戦明けから、質は落とさずランニング量を減らした。「開幕から全て大事な試合」と捉えるが、落とせない試合が続く終盤戦のために力を残した。後半戦スタートから4戦連続で白星がつかなくても「今までやってきたことを積み重ねるだけ」とぶれなかった。シーズン6完封は球団では95年斎藤雅樹以来23年ぶりで、東京ドームでのシーズン5完封は史上初。蓄えた余力が記録的快投につながった。

残り8試合。CS進出へ、次戦は中5日で28日DeNA戦(東京ドーム)の可能性もある。「あと何試合か分かりませんけど、全部完封する気持ちで投げたい」。なりふり構わず腕を振る。【桑原幹久】

▼菅野が今季6度目の完封で13勝目を挙げた。巨人投手のシーズン6完封は95年斎藤雅以来、23年ぶり。菅野は6完封のうち東京ドームで5完封。過去に東京ドームでシーズン4完封は巨人の89、94年斎藤雅と89年桑田、日本ハムの95年グロスといたが、同球場でシーズン5完封は初めて。52年のフランチャイズ制後、巨人投手が本拠地球場でシーズン5完封は、後楽園球場時代の58年藤田、63年伊藤、70年渡辺秀に次いで4人目のタイ記録となった。