苦笑いのような恥ずかしそうな表情で西武秋山翔吾外野手(30)はベンチに戻った。9回2死一塁で遊飛に倒れ試合終了。ベンチでは歓喜のハイタッチが始まっていた。「本当にうれしいです」。敗れはしたが、心から優勝を喜んだ。山賊打線の火付け役を担ったリードオフマンは歴代5位となる591試合連続フルイニングを達成し「試合に出ることだけは、負けていないです」と胸を張った。

苦しんだシーズンだった。高熱にうなされた日も、のどが腫れて声が出なくなった日もあった。それでも体にムチを打った。7月には調子を落とし月間打率は2割6分9厘。「調子が悪いんじゃない。実力です。そう思うようにしました」と自らに言い聞かせた。フリー打撃では変化球も投げてもらうなど工夫を続けた。15年に達成したシーズン200安打も意識することはやめた。「チームが優勝する方が大事」。

思い出に残った試合に9月27日ソフトバンク戦を挙げた。8回、自らの23号3ランで逆転勝利。人さし指を突き上げたシーンは、仲間からいじられるポーズになった。「ベンチの雰囲気が、今までで一番だったんじゃないかな。チームメートもお客さんも喜んでくれて、よかったです」。仲間の笑顔がファンの声援が、何よりうれしかった。だからこそ誓った。「もう今年は(CS、日本シリーズで)負けて胴上げはない。次は勝って胴上げしたい」。日本一まで、自らのバットで導くつもりだ。【保坂恭子】

◆山賊打線 西武の前身・太平洋時代の1975年(昭50)につくられた応援歌「惚れたぜライオンズ」の2番に「ごつい顔だよ 山賊打線」の歌詞がある。この年は江藤慎一が選手兼監督で土井正博、白仁天らが主軸だった。今年はSNS等で使われるようになりファンの間で広まった。