甲子園最終戦で金本チルドレンが意地を見せた。チームはすでに最下位が決定。今季は個人としても、納得のいく結果を残すことができなかった阪神中谷将大外野手(25)と陽川尚将内野手(27)が、来季につながる打撃を見せつけた。

途中出場の中谷が一振りで試合を振り出しに戻した。1点を追う6回に先発岩田の代打で登場。1死走者なし、カウント2-1からの4球目だった。三嶋が投じた149キロの真ん中直球を左翼スタンドへ放り込んだ。「速い真っすぐに振り負けないように、積極的に振っていこうと思っていました。しっかりと自分のスイングをすることができました」。この1発が沈黙する打線に勢いをもたらした。

続いたのは陽川だ。同点の7回、1死から大山が右翼線を破る二塁打でチャンスメーク。「大山がつないでくれたので」と、今永が投じた真ん中低めの変化球を気合を込めて一振。勝ち越しとなる中堅越えの適時二塁打を放った。

この日3打数3安打1打点の陽川は「声援を1年間通して送ってもらった。なんとか最後勝って終わりたかったので、よかったです」と虎ファンに感謝した。中谷も気持ちは同じ。来年に向けて「頑張るだけです」と声を絞り出した。昨季はチームトップの20本塁打を放った和製大砲もこの日で5本目。さらなる飛躍を期待されながらも思うような結果を残せなかっただけに、笑顔はない。

それでも負けっ放しでは終わらなかった。若虎の奮闘に金本監督は「中谷が同点ホームラン。あと、大山、陽川とね。決められた。追いついて追い越したので。1年間、やってくれたらいいんだけどね、ここでね。この甲子園で」と期待を込めた。悔しさを十分味わった分、来季はやってくれると信じている。【古財稜明】

▼阪神は本拠地甲子園で、チーム20本塁打。ラッキーゾーンがなくなった92年以降で最少だった、08年19本塁打の更新を免れるのがやっとだった。62試合を戦った本拠地と、13試合の横浜での本塁打数が同じという珍事となった。なお甲子園での今季の最多本塁打者は、DeNAソトで6本塁打。阪神最多は糸井、福留の各5本だった。

▼甲子園での阪神のチーム打率は2割3分9厘で、これはセ・リーグ6球団中最低。1位だった中日2割7分4厘から大差をつけられた。地元での深刻な貧打が、甲子園での歴史的苦戦を招いた。