日本野球機構(NPB)が共催するeスポーツ(テレビゲーム)のeBASEBALL パワプロ・プロリーグの研修会が13日、都内で行われた。NPBが公認する初のeスポーツ選手36人と予備登録選手12人の合計48人に対し、元ヤクルトでBCリーグ福島の監督兼球団代表の岩村明憲氏(39)が「スポーツマンシップについて」と題した講演を行った。

岩村氏はプロ選手としての心構えを説いた。「プロとアマの違いは100円でももらったらプロです。プロとしての自覚だと思う。若い人には『プレーでお客さんを満足させてやれ』と伝えている」。NPBとは報酬に差があるが、監督として選手に同じプロ野球選手としての自覚を促しているという。

失敗からの学びも勧めた。「何事も苦しむことが楚(いしずえ)になる」と座右の銘である「何苦楚魂」を紹介。入団当初に2軍戦で1イニング3失策したが、後にゴールデングラブ賞を6度受賞するまでに成長。「どんどんエラーしてほしい」と話した。

選手から質問も受けた。「プロ意識を持ったのはいつからですか」と問われると「母親が死んだ時に試合に出ていた時」と回答した。04年から闘病生活に入っていた母が、05年に死去。当時の若松監督に試合出場を直訴した。「親の死に目に会えない覚悟を持っていた」。もう1つ、ターニングポイントがあった。捻挫で欠場した際。先輩の池山から「お前を見に来るファンがいるかもしれない」と言われた。プロとしての自覚を、より強く持ったきっかけとなったという。

選手たちも、プロの先輩の言葉を実直に受け止めた。中日ドラフト3位の「m.o.m.o」ことプロダクション人力舎所属のお笑いトリオのロモペ嶋崎幹(26)は「岩村さんの言葉をいかに体に入れるか。気持ちの切り替えは響いた。ミスを引きずって6回に点を取られて負けたことがある。とてもぜいたくな時間でした」と心を動かされていた。

プロゲーマーで巨人ドラフト2位のたいじ(本名非公表)は「元プロ野球選手の努力の話は印象に残った。ゲームは(プロ選手の)歴史が浅いが参考になる。勝った時、ヒーローインタビューを想像するのは、自分もそういうタイプ。プロ野球選手もそうなんだと思った。今後もそういう気持ちを持ち続けたい」。違う分野で活躍したプロから刺激を受け、来月から始まるペナントレースに思いをはせた。【斎藤直樹】