<パCSファーストステージ:ソフトバンク2-4日本ハム>◇第2戦◇14日◇ヤフオクドーム

JR博多駅から新幹線つばめで24分、筑後船小屋駅を降りるとすぐにソフトバンクのファーム施設「ホークスベースボールパーク筑後」が見えてくる。総工費約60億円かけて16年に完成。広大な敷地の中に両翼100メートル、中堅122メートルの全面人工芝球場にサブ球場、室内練習場、選手寮…と最新設備が整う。

CSの試合前練習と同時刻に、背番号3ケタをつけた3軍の育成選手たちが汗を流していた。10年に興南(沖縄)を甲子園春夏連覇に導いた島袋も背番号「143」を背負う。球場ツアーで少年野球チームを引率した女性は「ヤフオクドームと同じ広さですが、ホームランテラスがないので、ここで練習するとホームランが出やすくなりますよ」と説明。この日先発した育成出身バッテリーの「千賀&甲斐」を夢見て、日本屈指の環境で練習を積む。

ソフトバンクは05年から育成選手を計54人指名し、17人が支配下選手になった。“伝説のドラフト”は10年。育成4位で千賀、同5位牧原、同6位で甲斐を獲得した。当時指名に携わった関係者は「育成は一芸が大事。甲斐はとにかく肩が強かった」と言う。170センチと小柄で、他球団は身長を理由にリスト外にしていた。メガネの捕手は通用しない概念を変えた古田敦也のように強肩を武器に「小柄な捕手」への偏見を払拭(ふっしょく)している。

千賀は6回2失点で試合をつくり、甲斐は1回無死一塁から飛び出した盗塁王の西川を刺した。一方で五分に戻した日本ハムは、育成選手を取らない。イースタン・リーグの試合数では十分な実戦経験を積ませられないことが理由で、その分期待の若手を強化指定選手として、2軍戦で定められた年間打席数や登板数を与える。西川、中島…クローザー石川直もそんな育成法でチャンスをつかんだ。

ちなみに育成選手を最も指名しているのは巨人の計65人で、支配下選手になったのは16人。両軍とも独自の育成哲学を持つ中で、決勝打を放ったのは巨人ドラフト1位の日本ハム大田だった。【前田祐輔】