阪神矢野燿大新監督(49)が今日1日からの秋季高知・安芸キャンプについて、“自己チューでOK”の鍛錬方針を打ち出した。10月31日の宿舎ミーティングで「自己アピールしてくれ」と熱弁。「自分がどうやったら試合に出られるのか。どうやったら野球人生が良くなるか」とこの秋は自己中心的な発想を認める。朝の早出練習は行うが夜間練習は撤廃。自主性を重んじる矢野イズムで、最下位からの逆襲を期す。

矢野阪神が、日本シリーズの熱戦から離れた高知・安芸で逆襲の1歩目を踏み出した。この日の夕方、空路で芸西村の宿舎入り。約30分のミーティングでナインの前に進み出た矢野新監督は熱っぽく言った。「自己アピールしてくれ」。今季は屈辱的な1年だった。01年以来、17年ぶりの最下位。チーム再建の土台となるのが、今日1日に始まる秋季キャンプだ。新指揮官は大方針を説明した。

「春のキャンプは実戦に入るから何かを変えようというより現状の調子を上げるとかになる。秋のキャンプは、いろいろ変えられるし、チャレンジもできる。いかに、自分がどうやって出るかを考えてやってくれたらいい。チームのことなんて、まだ考えることはないから。優勝したとき自分が出てなかったら楽しくない」

就任以来、自主性を強調してきたリーダーらしく、初めて指揮を執る秋季キャンプは「自己チュー」容認だ。じっくり考える時間もある。「もう1回、しっかり自分を見つめ直すこと。このチームのなかで、どうやったら自分は試合に出られるのか。どうやったら自分の野球人生が良くなるかをもう1回、振り返ってくれ」と伝えた。まずはチームよりも個人最優先。自己中心的に考え、レベルアップしてほしい思いがある。

独自の「矢野色」もにじむ。前任の金本監督は早朝の連続ティー打撃&ウエートトレーニングが秋季キャンプの日課。就任直後の15年には夜間練習も行っていた。矢野監督は「夜間は俺はもういいと思っている。夜までの体力を残すならグラウンドで目いっぱいやってくれたらいい。休むときは思い切り休んで、やるときは目いっぱいやってメリハリはあった方がいい」と言い、自身は1年目から夜間練習を行わない方針だ。朝練習は個別の課題に沿ったメニューもこなす方向。指揮官も現役時、自主的に打撃マシンに向き合った。「自分がどうなりたいかあったら(自然と)部屋でバットを振る」と強調した。

金本前監督は1年目「厳しく明るく」を打ち出したが、思いを受け継ぎつつ、矢野監督はナインに呼びかけた。「明るく元気にやっていこう」。覇気ある声で活気あふれる光景を追い求める。「声もすごい力になる。最後(起用するのを)どっちか迷ったら、元気のあるヤツを使う」。ほとばしる情熱をナインにぶつける。今日1日が再建への出発日になる。【酒井俊作】

◆17年秋季キャンプでの金本阪神 11月2日の初日から、野手全員が長さ91センチ、重さ1キロの長尺バットを使用。金本監督が現役時代に打撃練習で使った「鉄人養成バット」を、みんなが黙々と振り抜いた。居残り特打は1時間半に及び、連続ティー打撃は日没まで続いた。藤浪、岩貞らに課されたのは地獄のインターバル走。金本監督自らにらみを利かす中、180メートル走×8本を2セットで、合計2・8キロ。復活を期した藤浪は、何度もゴールになだれ込むハードさだった。