巨人原辰徳監督(60)の野球殿堂入りを祝う会が10日、都内で行われた。球界だけでなく、安倍晋三首相ら政財界のそうそうたるメンバーも出席して、お祝いの言葉を受けた。球界の高みの栄誉に浸ることなく、5年ぶりのリーグ優勝を目指す来季の奮闘を誓った。

タキシード姿の原監督の視界には野球にちなんだ9人掛けの円卓が無数に並んでいた。安倍首相ら輝かしい面々を前にあいさつ。名将三原脩の言葉「人生とは他動的である」を引き合いに「まさにこのところ人生とは他動的であると。周りの方の支え、影響、協力が現在の自分を作り上げている。つくづくジャイアンツで30年ユニホームを着てプレーできたことに感謝している」と思いを口にした。

安倍首相からは、親近感あふれる祝辞を受けた。神戸製鋼の会社員時代、同僚の女性が原監督のファンでルーキー年の22本塁打、126安打という数字を覚えていること。自民党選挙対策委員長の甘利明氏を介して食事をともにし「政治にも詳しく、こっちの世界に来ないかな…と思いもあったが、巨人の監督に就任され、諦めた」と明かされた。父は政治家安倍晋太郎で、親子鷹として育った原監督同様にサラブレッド。共通点も多い。

原監督にとっては恩返しの3次政権となる。02年に初めて就任する前のエピソードを披露。「01年シーズンインするやいなや、監督室に呼ばれて長嶋監督から『おめでとう! 来年から原監督だ!』と、いきなり言われた」。長嶋監督の下ではヘッドコーチで局面の作戦を託され、敗れたこともあった。山口オーナーは「自分をコーチに使いながら、次の監督として育てた。その恩を返せていないのが、3度目を引き受けた理由。背番号(02年初就任時と同じ83番)とヘッドコーチを置いてないことに、恩返しが込められている」と話した。後継者を見いだした時、ヘッドを任せ、そこからの監督育成へ強い意思を感じている。

原監督は花束を手に「60歳になり、人生1回転した。まだ、ぜんまい仕掛けの原辰徳には余力が残っている。来季から監督という役割。もう1度、やったるぞと」と所信表明。殿堂の栄光から、さらなる高みを目指す。【広重竜太郎】