熱気あふれる会場に潜入した。神奈川学童野球指導者セミナーが20日、横浜西公会堂で開かれた。少年野球指導者、医療従事者、保護者ら約580人が参加。午前9時半から、予定を30分ほど超えて午後4時過ぎまで続いた。

横浜南共済病院スポーツ整形外科部長の山崎哲也氏は「指導者が子どもたちの体を知ってほしい」と、リトルリーグ肩・肘のエックス線写真を解説。検診の重要性を訴えた。元中日の山本昌氏は「少年野球と私」を講演。経験を語った。他にも熱中症対策や初心者向け「並びっこ野球」の紹介など、興味深い内容ばかり。特に印象に残る言葉があった。

「勝利至上主義で前途ある子どもをつぶしていいのか。指導者からの一方通行では、子どもは育ちません」

横浜高の前監督、渡辺元智氏(74)だ。甲子園通算51勝、春夏優勝計5回の名将も、最初は勝利至上主義だったという。だが、うまくいかなかった。「選手を信頼する」ようにしてから結果が出た。「子どもたちから『自分で考える力』を奪っていいのか。指導者がこうやれ、ああやれではなく。自分で考え、たどりついたものは揺るがない」と力説した。くしくもこの日、教え子のDeNA筒香も同様のことを語った。

セミナーは今年で2回目。前慶応高監督で主催者代表の上田誠氏は「昨年の反響が大きかった」と手応えを感じている。故障予防に力点を置いたが、背景には野球人口減少への危機感がある。神奈川で始まった取り組みが、未来へつながることを願う。【古川真弥】