「4番内川聖一」が帰ってきた。ソフトバンクは24日、対外試合初戦だったオリックスとのオープン戦(宮崎アイビー)が降雨のため中止となった。メンバー発表まで行われ、4番でコールされたのは内川聖一内野手(36)。1軍では昨年8月3日オリックス戦以来、205日ぶりに打線の中心に座った。内川は試合中止後も室内練習場で黙々と打ち込み、完全復活に懸ける今季への思いをにじませた。

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「4番ファースト、内川聖一」。雨の中でのコールに今季、ソフトバンクの初陣を見ようと集まったファンも沸いた。内川自身は「なんとも思っていない。ああ4番なんだ、というくらい」と冷静だったが、同時に3番柳田、5番中村晃、6番松田宣と続く打線を見て周囲に漏らした。「これ、4番が打ったら強いですね」。時に自虐的な表現を用いることがあるが、誰よりも自分の復活を信じている思いがこぼれた。

無情にも雨は降り続き、オープン戦初戦は中止になった。内川が1軍で4番に入ったのは昨年8月3日オリックス戦以来。昨季は故障もあり、移籍後最少の71試合出場にとどまった。CSや日本シリーズでは6番、7番といった下位打線も経験した。

打順は関係ない。内川がよく表現する言葉だが、4番には独特の思いがある。「4番を打ちたい、というのではない。自分のバッティングができれば、自然に(打順の)中心の近くに行ける。やりがいはある。自分のようなタイプは打って自分の地位を確立させてきた。打てなくなったら終わりという覚悟は決めている。もう1回、存在価値を高めたい。そこを任せた、と言われる存在でいたい」。

中止が決まると内川はバットを片手に室内練習場へ向かった。ブルペンで投げる投手陣の球を見たり、ティー打撃でバットを振り込んだり。1時間半に及ぶ自主練習を終え、顔を上気させた。「ちょっとずつ、こういうものかなというのが出てきている。試合はやりたかったけど、雨が降ったことでできた部分もある。いい時間にできた」とうなずいた。工藤監督も「意図がはっきりしている。素晴らしいなと思いましたね」と話し、すれ違いざまに思わず「ナイス練習」と声をかけるほどだった。

内川には今年からキャプテンマークがなくなった。だが当然、チームを引っ張る思いはある。「自分のことをやれたら、そこ(4番)に近づくという期待はしている」。4番で、打線の中心で。チームを勝利に導く。【山本大地】