阪神岩貞祐太投手(27)に焦りはなかった。1点リードの3回1死から3者連続四球で満塁のピンチ。突然、制球が定まらなくなっても、思い切って腕を振った。

「自分で招いたピンチなので、開き直って『どうにかなるかな』と。あれだけ四球を出すのは、自分として珍しい。3つも出したので、これ以上はないなと自信を持って投げました」

一打逆転を許す場面にも動じない。4番バレンティンを一飛、続く塩見を空振り三振に仕留めた。矢野監督も「腕を振って、球の勢いとかキレで抑える部分が前面に出ていた。バレンティンと塩見を打ち取るところまで持っていくのは簡単なことじゃない」とバッテリーを絶賛した。

岩貞は7回途中を1安打無失点で救援陣にバトンを渡した。「ずっとオフから、真っすぐにこだわってきた。それが出せた。全体的に球威で押せた点はよかった」。昨季はヤクルトに対し、5戦で防御率5・57と打たれた。緩い変化球をコーナーに決めたり、クイック投法でタイミングを崩すなど工夫を凝らした。価値ある今季初勝利だ。

追いかける背中がある。キャッチボール相手の能見だ。日ごろからつきっきりでフォームを観察してもらっている。岩貞はそのポイントを明かす。「意識は体重移動。いかに、自分の体がバッターにシフトしているか。体の全体でスピードを生み出してボールを放す意識です」。大きく胸を張って、1ミリでも前でリリース。先輩左腕からの助言で直球の質が向上した。「ずっと能見さんに憧れていた。左のエースとしてやってこられたので、自分もそのポジションを任されたい」。

春季キャンプから成長の跡を残し、指揮官の信頼を勝ち取った。開幕2戦目という重要なポジションで期待に応えた。「(チームを)引っ張るというか、成績を出す以外にない。また継続できるようにやっていきたい」。次戦は4月6日広島戦(マツダ)に先発する見込み。エースの座を狙う左腕がチームを勢いづけた。【真柴健】

阪神金村投手コーチ(先発岩貞について)「あの打線を1安打に抑えるのはすごい。気持ちの強さが持ち味。よくしのいだ。(29日の)メッセもだけど、ブルペンでは正直よくなかった。(3回の)ピンチを越えたのでスッといけた」

阪神梅野(先発岩貞を好リード)「右バッターに対する意識付けとか、困ったときの真っすぐなど、お互いイメージ通りできたことが結果につながったと思います」