広島移籍後初スタメンの長野久義外野手が、渾身(こんしん)のスイングで大野雄の147キロ直球を捉えた。

広島ファンで赤く染まったナゴヤドームの左翼スタンドに、ライナーが突き刺さった。3-3の7回先頭。カウント3-2からの勝ち越し1号ソロ。「まぐれです。まだまだ始まったばかり」。最後は逆転負けで4年ぶりの単独最下位となっただけに、控えめに振り返った。

複雑な思いをバットに込めた。開幕カードの巨人3連戦では、1、2戦目はベンチを温めた。2戦目は9回裏に代打の準備をし、次打者席から展開を見守ったが試合終了。3戦目に途中出場で初安打を放っても「打撃の方がまだまだ全然です」と喜ばなかった。巨人でレギュラーを張ってきたプライドだった。

巨人入りした2年連続MVP、丸の代役として見られる重圧と闘ってきた。キャンプではハイペースの周囲を尻目に、冷静に自らの肉体と向き合った。体調がよければペースを上げ、不安があれば自重。周囲に焦りは見せなかった。

緒方監督は「よかったね。打席での感じも悪くなかった」と話した。第2打席でも右前打しており、初のマルチ安打もマーク。この日は左腕大野雄対策で先発したが、相手の左右を問わず起用される可能性も高まった。【村野森】