魂の77球だ! 広島野村祐輔投手(29)が、中日打線を7回3安打1失点に抑え、今季初勝利を挙げた。

初回に1点を失ったが、相手の早打ちを誘う絶妙の制球で追加点を阻止。鈴木の逆転V3ランを呼び込み、今季初勝利をマークした。連敗は3でストップし、単独最下位も1日で脱出。昨年3勝9敗と鬼門だったナゴヤドームから、王者が逆襲を始める。

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握りしめた右拳を、野村は感情のおもむくまま振り下ろした。表情を変えないはずの男が、我を忘れた。1点ビハインドの6回裏2死三塁。打たれれば敗色濃厚。4番ビシエドを申告敬遠で歩かせ、一、三塁で5番アルモンテに魂の内角直球勝負だ。滞空時間の長い二飛に仕留め、ピンチを脱した。

7回先頭の打席に送り出され、鈴木の3ランで逆転した後のその裏のマウンドも託された。前日チームが同点に追いつかれた魔のイニング。高橋、堂上、加藤を難なく3者連続内野ゴロに仕留めた。7回77球、3安打1失点の初勝利を「コントロールがよかった。ストライク先行で球数を少なく投げられた」と振り返った。

「投壊」を救った。救援陣が乱れていた。3月31日巨人戦は守護神中崎が9回に勝ち越されて敗れた。前日2日の中日戦は7回に島内が乱れ、セットアッパーのフランスアが敗戦投手になった。悪い流れを止めたかった。初回に1失点したが、2回以降は1安打。チーム事情は分かっていた。

昨年は初の開幕投手に抜てきされながら、7勝に終わった。制球力を上げるため、投球フォームを見直した。重心が一塁側に傾いていることに気づいた。ここを直せばここが狂うという繊細な調整を、根気よく続けた。この日はキャンプ、オープン戦を通してつかんだフォームの感覚を「初回はしっくりこなかった」と修正する柔軟さもあった。かつての頼もしい姿を完全に取り戻した。

緒方監督は「立ち直ってしっかりと、一番のピッチングしてくれた。よかったよ。引っ張りたかったけど、最初の登板だから。8回も9回もどうかという投球をしてくれた」と褒めちぎった。チームの連敗を3で止めた野村が、逆襲のキーマンになる。【村野森】