女房役が投打でチームをけん引した。広島会沢翼捕手(31)が7連勝に大きく貢献。2度の得点機で凡退も、8回に中日ロドリゲスの156キロ直球を中堅にはじき返す決勝打を放った。

守っては完封勝利の大瀬良を好リード。2試合連続0封勝利に導いた。平成最後の本拠地マツダスタジアムでの試合を勝利で締めくくり、最大8あった借金は「1」。完済を目前とした。

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二塁ベース上で2度、右拳を握ると、もう1度力を込めて右拳を握った。会沢は大瀬良への愛情と、自身への怒りをバットにぶつけた。同点の8回2死一、二塁から中日ロドリゲスの156キロ直球をぶったたいた。鋭い打球は中堅手の頭上を襲い、2人が生還。均衡を破るとともに先発大瀬良に2勝目を届けた。

4回は2死一、三塁、6回は2死一、二塁でいずれも凡退。ブレーキとなっていた。「ここで打たなかったら、やばいと思っていた。本当に大地に勝ちが付いたことが一番良かった」。自分のことよりも、開幕戦勝利を最後に白星から遠ざかっていた大瀬良のために打った。リードでは中盤までは直球系の球種で押し、終盤はフォークを増やすなど、最後まで中日打線に的を絞らせなかった。

野手の中では兄貴分も、投手との関係は女房役に徹する。前面に出るのではなく、投手を引き立てるタイプ。投手の内面を知るため、普段からさりげなく近づき、声をかける、表情を見る…。「何を考えているのか分かるし、意外とそういう性格しているんだと気づくこともある」。この日バッテリーを組んだ大瀬良は2年前から「僕もアツ(会沢)さんに近づこうとしています」という。共同作業だった。この日も試合中、意見交換する姿も見られた。2人で積み重ねた信頼関係が、完封勝利につながった。

会沢は前日の野村に続き、2試合続けて先発投手とお立ち台に上がった。「なかなかないことなので良かったです。バッテリー間でいい試合をつくれているのかな」と、2試合連続0封勝利に優しい笑顔を見せた。緒方監督も「今日もリードが本当に良かった。何より8回の打撃は大瀬良を助けてくれて。いい女房じゃない?」と内助の功をたたえた。頼れる扇の要が緒方野球の屋台骨を支えている。【前原淳】