神様、お願い! 阪神糸井嘉男外野手(37)が7回にV打を放ち、初戦で逆転負けを喫した中日へのリベンジに成功した。

初回には史上71人目となる通算300二塁打に記録。1425試合での到達はNPB史上10位のスピード達成となった。主軸の活躍で、正念場の12連戦を1勝1敗とした。

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打球の行方を見つめながら、糸井は祈るような思いだった。「神様! 抜けてくれ!」。同点で迎えた7回1死二、三塁。2球目、真ん中低めにきた138キロフォークを強振。一塁線への鋭い打球はビシエドのミットをはじき、右翼線に抜けた。願いは通じた。勝敗を左右する1本に、二塁ベース上で右拳を握る。三塁側ベンチのナインも身を乗り出して祝福した。

節目の記録で、勢いに乗った。初回だ。力強く打ち上げた打球は中堅フェンス最上部に直撃。通算の二塁打数は「300」に到達した。あと少しでスタンドインという大きな当たりで史上71人目の節目を飾った。所要1425試合での到達はNPB史上10位の早さだ。野手に転向しながら、長打力と脚力を生かしてのスピード達成だ。試合後は「勝ってよかったです。どんどん上を目指してやっているので」と力強かった。ぐるりと巻いた右手のテーピングを外しながら、チームバスに乗り込んだ。

ベテランの域に入っても、誰にも負けない練習量を誇る。ちょうど1カ月前、開幕前日の3月28日だった。京セラドーム大阪で午後1時の全体練習が始まる前から、糸井はバットをずっと振っていた。ロングティーで柵越え連発。他の選手がグラウンドに出てくる直前に引き上げると、練習開始時間に再び現れた。汗も拭き取り、今来たかのような表情で体を動かし始めた。今季も開幕から打率3割前後をキープ。糸井の存在が猛虎打線の原動力だ。

主軸が打てば、白星をつかめる。糸井のV打に浜中打撃コーチは「よく決めてくれた。ああいうところで決めてくれるのが、ヨシオの勝負強いところ。調子を落としていた部分もあったけど、これからどんどん上がってくると思う」とたたえた。

「平成」は残り2試合となった。「令和」へと時代をまたいでも、超人は突っ走る。【真柴健】