広島会沢翼捕手(31)が最後まで諦めぬ姿勢を貫いた。

10四球を与えた投手陣を辛抱強くリードし、打っては3号ソロを含む今季初の猛打賞。最後まで攻守でナインを鼓舞し続けた。チームは連敗で4年ぶりの3、4月負け越しが確定。それでも選手会長は最後までヤクルトを追い詰めたチームの粘りに明日への手応えをつかんだ。

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会沢はマスク越しに投手を、バットで野手陣を最後まで鼓舞し続けた。同点の4回には一時は勝ち越しとなるソロを左中間席にたたき込んだ。3点を追う8回も左前タイムリーで諦めない姿勢を示した。「連戦が続く中で最後もいい形で攻撃できた。常に諦めないような戦いができれば明日につながる」。12連戦最初のカードは負け越したが、選手会長は力強く前を向いた。

試合は序盤からシーソーゲームとなった。先発九里ら投手が10四球を記録するなど苦心のリードが続いた。返球の間合いを変えながら、落ち着かせるようにアイコンタクト。励まし続けた。「(投球は)共同作業。切り替えてやりたい」。最後まで投手陣を責めることは一切口にしなかった。

打っては今季初の猛打賞を記録した。オープン戦は打率4割2分3厘の好成績も、オープン戦最終戦でフェースガードを直撃する死球を受けた。影響はゼロではなく、4月中旬まで打率は1割台と低迷。強打の捕手の宿命か。昨年、球団捕手初の2桁死球を記録した厳しいマークは今年も変わらない。それでも最近10試合は28打数10安打で打率3割5分7厘、2本塁打、7打点と調子を上げてきた。

8回の適時打は因縁の相手から放ったものだった。07年のプロ初打席はウエスタン・リーグで近藤(当時サーパス)と対戦し、頭部死球だった。あと1人で完全試合を危険球退場で阻止。苦い記憶が残る。それでもヤクルト移籍後はこれで10打数5安打で5割と打ち負かしている。選手会長のような強い精神力が、今のチームには求められる。

広島は2連敗でBクラスに終わった15年以来の3、4月負け越しスタートとなった。緒方監督は「結果、勝つことはできなかったけれど、最後まで追い込むことはできた」と選手の粘りに光明を見た。コイの季節はこれからだ。【前原淳】