負けん気の強いタイガだ。DeNAドラフト1位ルーキー上茶谷大河投手(22)が、新人一番乗りでプロ初完封をマークした。完封目前で失点した前回登板の悔しさを胸に、ヤクルト打線を9回121球4安打無失点。自身3連勝で今季3勝目。チームは今季2度目の4連勝で2カード連続勝ち越しを決め、借金も「5」に減らした。

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9回1死走者なし。上茶谷はバレンティンに内野安打を許し、前回登板の映像がフラッシュバックした。5月25日阪神戦(横浜)は8回まで無失点。プロ初完封が見えた矢先、9回に糸井に3ランを許した。「打たれた時は『もしかして』と思いましたね。でも、1点はいいやと思って」と切り替え、最後の打者を遊併殺に仕留め、ルーキー一番乗りの完封を手にした。

ここまで登板した8戦の経験で、高低の使い分けに活路を見いだした。「今日は低めと高めがはっきりしていたところが良かった。甘い高めがなかったから、高めのボールでファウルも取れた。その上で低めを意識した中で、カットボールも有効的だった」とピンチらしいピンチもなく、スコアボードに「0」を並べた。

冷静な投球術で試合を運ぶ半面、負けん気の強さは人一倍。野球を始めた小学1年。初めて、試合形式のゲームに参加した。打席に立った大河少年の結果は三振。ベンチに戻るや否や、ヘルメットとバットを投げつけた。「何でも勝負は勝ちたい」。自身の野球史で初の「敗北」に悔しさがあふれ出た。そんな熱き闘志は内に秘め、マウンドでは冷静沈着。だからこそ、初完封について「めちゃくちゃうれしい」と子どものように喜んだ。

「戦国東都」でしのぎを削ったドラフト1位同士の投げ合い。対戦が決まった直後に、上茶谷(東洋大)から清水(国学院大)にメッセージを送り、互いに「まじか」と意識していた。それでも「始まったら」と負ける気など、さらさらなかった。2回には「何となくスライダーが来るかな」と外角低めをすくい上げ、先制点を演出。プロ初打点も先乗りでいただき、全ての勝負に勝った。【栗田尚樹】