ユニホームの胸の部分を真っ黒にしたヤクルト奥村展征内野手が、白い歯を見せながらベンチに戻ってきた。2-2で迎えた6回1死一、三塁。カウント3-1で、スクイズのサイン。ロッテ西野の外角高め直球を、三塁線へ見事に転がした。

三走の中村が生還し自身はヘッドスライディングをしたが、惜しくもアウト。「記憶が飛ぶくらい大事な場面。確率として、ストライクを取りにくると思っていた」と振り返った。ヘッドスライディングにはケガのリスクも伴うが「気付くとやってしまう」と気迫のプレー。好守もあり、小川監督から「一生懸命やる姿勢は、チームの状態がよくない時に必要」と評価された。

最初に憧れた左打者は、父・伸一さんだった。社会人プリンスホテルでは、宮本ヘッドコーチとともにプレー。子どもの頃、バッティングセンターでの打撃に衝撃を受けた。柔らかさと強さを併せ持ったスタイルは、今でもお手本だ。

2年前、歴史的大敗のシーズン96敗を経験しており「あの時と同じには、なりたくない」と誓う。遊撃手は西浦、太田らのケガで回ってきた位置。「また使いたいと思ってもらえるように、全力でプレーする」。【保坂恭子】