ヤクルト山田哲人内野手(26)が、球団史を塗り替えた。1回に中前打を放ち、通算1000安打。26歳11カ月で大台に到達し、球団では06年の岩村を抜く最年少記録となった。チームは接戦を落とし3連敗となった。最下位に沈む苦しい状況だが、プロ野球選手としての自覚を胸に、現状打破を目指す。

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秋田の強風にあおられながら、山田哲は記念ボードを手にした。初回、先頭で巨人先発メルセデスの変化球をとらえ、中前に運んだ。「素直にうれしいです。でも、それくらい。(最年少は)特別にはないです」。ヘルメットを脱ぎ、スタンドへ深々と頭を下げた。

プロ野球選手は、常に見られる職業だ。野球少年やファンの存在を意識し“格好良く”あることも、大事な要素の1つと捉える。オフシーズンの自主トレでは、アドバイザリー契約を結ぶアディダスジャパンのウエアを着用。その際、いくつかの候補の中からコーディネートをするのは、自分。全身に気を使って、前日から決めているという。

昨季はバット、リストバンドなどにゴールドを取り入れた。今季はさらに打撃用手袋に、シルバーカラーもプラス。さらに輝かしい彩りとなった。

100本塁打、150本塁打に続いて、1000安打も球団最年少での達成となった。それでも「俺が(レギュラーとして)出始めたのは3年目の途中。村上はもう2年目から出ているから、きっと(最年少)記録は抜かれるんだよ。そういうもの」と白い歯を見せる。服装に気を使うのとは別に、こういう面では飾らない。

今季は2年連続4度目のトリプルスリー、さらに日本プロ野球初の「40本塁打・40盗塁」を狙う。最も意識している出塁率は4割2分6厘。四球は76試合を終えて70個と、王貞治氏の持つシーズン記録158個も視野にとらえる。高い打撃技術と対応力が最大の持ち味なのは揺るがない。

以前は無心になろうとした打席でも、自分のコンディション、相手投手の状態によって、柔軟に打席の中で狙いを変えるようになった。球種、コース、ボールの高低を見ながら「チームバッティングをするとか。打つ方向や、軽打をするか、しないか」と、状況に合わせた瞬時の判断を下す。

すべては勝つための目標だ。最下位に沈む現状に「勝ちたい。やりがいのある試合をたくさんしたい。つらい状況だけど、まだ3カ月ある。野球は何があるか分からない。諦めないで、前を向いてやるしかない」と逆風に立ち向かう覚悟を示した。チームを追い風に乗せる“格好良い”一打を追い求める。【保坂恭子】