阪神糸井嘉男外野手がゼロの呪縛を解き放った。1回、2死走者なし。1ボールから左腕浜口の148キロを強振。まだ明るいハマスタの空に舞い上がった打球が、右翼席に突き刺さった。先制の5号ソロ。前夜まで2試合連続完封負けを喫していたチームにとって、23イニングぶりの得点となった。

反撃ののろしを上げたのも超人のバットだった。2点を追う8回。2死一、二塁から代わったばかりの左腕エスコバーを攻め立てる。150キロ台後半のストレートをカットすると、最後は2ストライクから6球目スライダーをセンター前へ。チームにとって30イニングぶりの適時打をマーク。無得点地獄&タイムリー欠乏症を糸井1人でダブル突破した。

苦境を迎えたチームを支えている。6月の月間打率はセ・リーグトップの3割5分4厘(79打数28安打)。春先の好調をけん引した近本、梅野らのバットが湿りがちになるなか、37歳の実力者はレギュラー陣で唯一の打率3割台をキープだ。大幅に組み替えられたこの日の試合も定位置の3番は不動。しっかりと役割を果たした。

矢野監督はさらなる爆発を期待する。先制アーチについて「甲子園なら普通のフライやで。めっちゃ狭いよな(笑い)」と冗談を飛ばしつつ「状態はずっといい形で来ている。嘉男ももっともっとホームラン打てると思う」と長打力にも期待した。帰り際に「効果的な先制アーチだった」と、質問を浴びた糸井は「はい」とだけ答えて帰りのバスへ。まだ納得などしていない-。そんな表情だった。【桝井聡】