全セの阪神藤川球児投手(38)が7年ぶりの球宴で風格たっぷりの3人斬りを決めた。8点リードの9回に登板。全パの楽天銀次、ソフトバンク甲斐、西武森を全12球直球勝負で仕留めた。悪天候で9回までの試合続行が危ぶまれる中、「自分の中ではどちらでもいいかなと思っていた」と泰然自若。「自分がどうこうというより、ファンの人がいいプレーを見られた」とナイスゲームを喜んだ。

巨人坂本勇からは「懐かしいですね」と声をかけられた。聖地甲子園での球宴復帰登板。リンドバーグの登場曲が途中で止まってしまう“ハプニング”にも反応できる余裕が、修羅場を経験してきた証しだ。強い雨が降り続き、マウンドは泥だらけ。入念な整備を試みようとした審判団を「これぐらいでいいですよ」と笑顔で制し、ぬかるむ土の上で丁寧に真っ向勝負を演じた。最速146キロながら、浮き上がる「火の玉」でフライアウト3個をゲット。悪条件の中でも野球ファンを沸かせる、さすがのテクニックだった。

「あまり過去にとらわれることなく生きていくのが自分の生き方なので」。試合前の言葉通り、登板後はすぐさま心を切り替えた。取材対応中、巨人原監督に「また後半頑張ろう」と声をかけられ目の色が変わった。「去年最下位で(球宴で名前を)呼ばれるのも最後だった。その辺はやっぱり頑張らないとね。阪神タイガースという看板を背負ってやる以上は」。去り際、「また後半戦頑張ります」という言葉に自然と力がこもった。【佐井陽介】