足が震えていても、楽天菅原秀投手(25)は腹をくくった。「プロ初登板の比じゃないくらい緊張していました」。

先発を言い渡されたのは、マウンドに上がる約1時間前。先発予定だった塩見が練習中に腰の張りを訴え、本人から直接投げられない可能性を伝えられた。その時点では「もしかしたら、あるかも」。正式決定に心拍数が跳ね上がった。

足が痛くても、根性を見せた。「チャンスをいただいて、何とか結果を残したかった」。2回に先制され、なお2死一、三塁で打球が右膝付近を直撃した。「骨には当たっていなかったけど(瞬間は)力が入らなかった」。1度ベンチ裏に引き揚げ、テーピングで患部を圧迫。続投を志願した。「足のことばかり気にして、そっちに集中した分、無心で投げられたのかもしれない」。3回以降は得点を許さず、5回5安打2失点で逆転を呼び込んだ。

福井工大福井時代はナックルカーブを駆使し、12年夏の甲子園で2桁奪三振を記録。平石監督も「曲がり球1つ1つに関しては人にないようなものをもっていた」と認める独特の指先感覚に精度が加わった。2軍で佐藤義則投手テクニカルコーチから「一番高いところをイメージして落とす」とカーブのコツを伝授され、1軍ではキャッチボール相手のエース則本昂に「僕に向けてフォークを投げて下さい」と頼んで研究を重ねてきた。

中継ぎで挙げた2年前のプロ初勝利以来となる2勝目だ。「あの時は3球しか投げてなくて、ホンマにお立ち台でいいのかと。今日は、5回投げられたので」。謙虚な救世主は少しだけ胸を張った。【亀山泰宏】