阪神担当が独自の視点で取材する「虎番リポート」は、厳しい夏を乗り切るための「酷暑対策」にスポットを当ててみた。普段の練習から試合前練習、試合開始時間に至るまで。猛暑に打ち勝つさまざまな工夫に迫る。【取材・構成=奥田隼人】

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年々、暑さが増していく日本の夏。阪神では細やかな酷暑対策で、選手の快適なプレー環境作りに努めている。

1軍では、今季から就任した清水ヘッドコーチの発案で、試合前のシートノックを取りやめるといった画期的な試みが行われている。暑さによる体力消耗を防ぐ狙いだ。試合前練習も屋外グラウンドと室内練習場のどちらかを選べるようにするなど、選手の状態に応じたコンディショニング作りに注力している。

練習時の打撃ケージにも秘密がある。ケージの上に、黒い網目状のシートが掛けられている。三方向を囲われたケージ内では温度が上昇するため、同様のシートを張って陰を作り、ケージ内の温度を下げている。「シートがあるのとないのでは全然違う」という声が選手から上がるように、効果はあるようだ。

2軍本拠地の鳴尾浜球場では、熱中症を注意喚起する張り紙で対策を行っている。気温や湿度、WBGT温度(気温、湿度・放射熱などから求める熱中症の指数)が書かれたものだ。練習開始1時間前にチームトレーナーが専用の測定器で測った数値を書き込む。昨季までは選手寮の入り口などに張られていたものを、今季からはより選手の目が届きやすいよう、練習待機所にも掲示。WBGT温度のレベルが高い時は「外にいる時間をできるだけ短くして、休憩をできるだけしっかり挟むようにしています」と同トレーナー。通常は屋外で行う練習開始時のストレッチなどを、屋内で行うようにしている。

練習メニューにおいても「ランの量を減らして、股関節や胸椎などのエクササイズに切り替え、時間を取って多めにやっています」。屋外練習で消耗の激しい運動を減らし、動かずにできるメニューを増やしている。

デーゲームの多い2軍戦では、NPBから「照明設備がある球場では、なるべくナイターでやるように」という指導もある。昨季はデーゲームだった倉敷での試合がナイターになるなど、6~9月のナイター開催(午後4時開始以降を含む)は昨季から3試合増えている。試合で最高のパフォーマンスを発揮するためには、暑さに向き合うこともまた、必要となる。