エースが、3連覇中の広島の自力優勝を消滅させた。巨人菅野智之投手(29)が8回1失点の好投で、7月2日の中日戦以来6試合ぶりの9勝目を挙げた。

同い年の広島野村と通算9度目のマッチアップ。投手戦を制し、マツダスタジアムでは開幕カード以来の勝ち越しを決めた。2位DeNAとの差を4ゲームに広げ、3位広島との差は4・5ゲーム。勝負の8月に頭1つ抜け出した。

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試合の流れをエースの嗅覚でかぎ分けた。同点の6回2死。菅野は鈴木の初球にこの日最速の153キロを投じ、ファウルさせた。152キロの直球で懐を攻め、外角139キロのカットボールで二飛に封じた。「ランナーがいなくても、勝負どころというのがある」。2日のDeNA戦、2点リードの4回に筒香の1発から流れが変わった教訓を生かし、ギアを上げた。

一時は研ぎ澄まされた感覚が鈍った。腰痛でファーム調整中だった5月ごろ、謎の体調不良にも襲われた。精密検査を受けたが、原因は不明。「食生活から見直そうと思った」と新たに始めたのが「グルテンフリー」だった。小麦などグルテンを含む食品をとらない食事法。免疫力の向上や食欲の抑制などにも効果があると言われ、6月から実践した。

テニスのジョコビッチやメジャーリーガーなど、一流プレーヤーが実践する食事法は抜群の効果を発揮した。小麦が含まれるパンやラーメンは口にせず、肉類や米などで栄養補給。約2カ月が経過し「よく眠れますし、本当に体調がいいんです」と、謎の体調不良から完全に復活。自然と体もしぼれ、故障前の体のキレと力が戻った。

「心技体」の順番を「体技心」と解釈する。最も大事な体調さえ戻れば、エースに死角なし。疲労が蓄積する8月に2試合連続で中5日での登板だったが、ギアを1段上げた6回から3イニング連続で無安打。8回1死、投ゴロで左足をひねって、ヒヤリとさせたが、チームに流れを完全に引き込んだ。

広島との開幕戦、自身は敗れたが、3連戦を勝ち越した。敵地最後の3連戦ラストを白星で飾って、カード勝ち越しを決定。2位、3位との差も広げた。台風10号の影響で15日は山陽新幹線が終日ストップ。東京へ移動できず、広島に1日延泊することが決まった。16日の阪神戦は当日移動の強行日程となるが、エースの快投で勢いに乗ったチームはアクシデントをも乗り越える。【久保賢吾】

 

◆菅野対野村の先発対決 昨年10月4日以来、通算9度目。責任投手になった試合は菅野5勝1敗、野村1勝5敗で、17年4月25日から菅野が4戦4勝している。