冷蔵庫事件から2カ月。DeNAスペンサー・パットン投手(31)が、実戦復帰した。2日、三菱日立パワーシステムズとの練習試合(横浜)に先発し、1回をパーフェクト。8月3日の巨人戦(横浜)で、自身の投球へのいら立ちからベンチに設置されている冷蔵庫を殴打し「右手第5中手手根関節脱臼骨折」と診断され、整復手術を受けた。当初は今季絶望とみられていたが、驚異的な回復力で熱い男が帰ってきた。

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クールダウンしたパットンが、報道陣の前に現れた。そして極めて冷静に、極めて穏やかな表情で言った。

パットン 今日は優しく、水を1本、冷蔵庫から取り出したよ。おいしかった。

幼き3人のパパでもある31歳。子どもたちに語りかけるような、優しい表情で笑顔を見せた。

熱くなるタイプ。そんな気持ちは冷却し、クールにマウンドへ上がった。実戦復帰の相手は、社会人チーム。最速145キロをマークするなど、打者3人を全て内野フライに片付け、わずか10球で仕事を終えた。「うれしかった。肩肘は問題ない。CSに向けて準備するだけ」と淡々と先を見据えた。

右、左、右。ワン、ツー、スリーの冷蔵庫パンチから2カ月がたった。8月3日の巨人戦。2点リードの8回に登板し、1死も奪えず2失点で降板。怒りのあまりベンチの冷蔵庫を殴り、右手小指を骨折した。米国で整復手術を受けてから再来日。2軍でリハビリを続けてきた。「早く戻りたい気持ちだけ。できるベストを尽くしてきた」と今季絶望の見通しを払拭(ふっしょく)した。

改心した。球団からは罰金500万円の他、野球振興活動への参加を科された。2軍リハビリ中に神奈川県内の小学校に週に1回、計4回通った。子どもたちの何げない笑顔が、自然と自身の笑顔を作っていた。「いい時間だった」とまた笑みがこぼれた。鬼のパットン改め仏のパットン。また優しく冷蔵庫から水を取り出す。【栗田尚樹】