【桃園(台湾)6日】侍ジャパンが4番鈴木誠也外野手(25)の「see ya(セイヤー)!」な1発でスーパーラウンド進出を決めた。1次ラウンド2戦目のプエルトリコ戦で3回2死一、三塁で豪快な3ランで主導権を完全掌握した。日本の主要国際大会では史上最年少4番弾となる価値ある1発で4-0の勝利に導き、2連勝。先発の高橋礼投手(24)も6回1安打無失点と好投した。同組の台湾も2連勝で、ともに1次ラウンド突破。7日の台湾戦の結果も日本でのスーパーラウンドに持ち越され、重要な一戦。でも、まずはsee you in Japanだ!

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乾いた衝突音だけで結末を想像できた。4番鈴木のビッグショットだ。「カンッ!」。心地よい響きが台湾の秋風に乗る。大飛球が夜空にグングン伸びていく。桃園まで駆けつけた日本人ファンは日の丸の旗を振ることすら忘れ、観客席から立ち上がった。

「see ya(セイヤー)!」。世界各国の野球マニアが一斉に叫んだかもしれない。「先制点を取った後なので、楽な気持ちで打席に入れました。何も考えずに来た球を打とう、と」。1点先制直後の3回2死一、三塁。1ボールから左腕ソトの低め142キロ直球を寸分狂わず打ち上げた。飛球は強さを保ったまま左翼席中段にズドン。値千金の3ランを放ち、チームを2連勝&スーパーラウンド進出に導いた。

打撃の感覚、不調時の対処法…。この日も試合前練習時、坂本に質問をぶつけていた。貪欲な向上心が進化を加速させる。これまでプロが参加した主要国際大会での侍ジャパン最年少4番弾は17年WBC筒香の25歳3カ月。鈴木は25歳2カ月で「プレミア12」1号を決め、歴史を塗り替えた。

4番。もちろん重みはズッシリ感じている。ただ、スタイルがブレることはない。以前、世界屈指の5ツールプレーヤー、エンゼルス・トラウトを携帯電話の待ち受け画面に選んでいた時期がある。打撃写真ではない。27番を背に走る姿だ。「僕は打てばいいだけの選手じゃない。守りも走塁もちゃんとしないといけない」。今季はキャリアハイのシーズン25盗塁。侍戦士に変身しても信念は揺るがない。

2回、無死一塁で難なく二盗に成功。「ちょっと(先発投手に)てこずっている感じもあった。なんとかプレッシャーを与えられたらと思って」。今度は無死二塁から5番浅村の中堅定位置やや後方の飛球でタッチアップし、三塁を陥れる場面もあった。そして、仕上げはド派手な1発。打って走って守れる4番。「see ya」鈴木、誰もが認める万能侍だ。【佐井陽介】

◆「see ya(セイ、ヤー)!」とは 「ya」は「you」の口語とされる。大リーグなどでホームランが出た際、ボールに別れを告げる意味合いで使われる。実況が興奮して叫んだ場合、「セイヤー」と聞こえる時がある。