5月に現役を引退した上原浩治氏(44)が特別インタビューに応じ、野球の世界ランク上位国で争う「プレミア12」スーパーラウンドについて展望を語った。勝ち上がってきた各国の1次ラウンドでの戦いぶりをチェックした上で、決勝は日本と韓国の争いになると予想。日米で幾多の修羅場をくぐり抜け、国際試合で無敗を誇った経験から、侍ジャパンが世界を極めるポイントを指摘した。(本文敬称略)

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-もっと具体的に指摘してください

上原 どこの国とは言わないけど、今回のプレミア12でもあったプレーを紹介します。ノーアウトかワンアウトだったと思うけど、一塁に走者がいて、三塁線を大きく空けたシフトを取っていたんです。セオリーなら、長打で一塁走者をホームにかえさないため、一塁線や三塁線は打球が抜かれないように締めておかなきゃいけない場面。でも、メジャーでは打者の打球が飛ぶ方向を重視する傾向がある。ヒットを防ぐのも重要だけど、一番大事なのはチームが勝つこと。ヒットを打たれても、点をやらなければいいんです。ヒットを防ぐ確率を下げても、点を取られる確率が上がったらダメ。

さっき挙げた例でも、逆方向を狙われて三塁線を抜かれ、簡単に1点を取られていました。もうひとつ付け加えるなら、ライン際を抜けたクッションボールの処理は球場によっても違うし、意外と難しいんですよ。そういう細かいことを考えて野球をやっていない。

-走塁は

上原 それはもっとむちゃくちゃ(笑)。例えばエンドランがかかるでしょ。そうしたら、一塁走者はスタートしてから打球を確認しないんですよ。だからエンドランでフライを打つと、よく併殺になる。だから守っているショートの選手は、フェイクでゴロを捕って二塁へ送球するふりをするんですよ。走者は打球を確認しないから、フライが上がっていてもフェイクに引っ掛かるんですよ。

信じられないのは、そうやってフェイクするショートの選手も一塁走者になると、二塁ベースにひたすらガムシャラに走る。日本では盗塁のときでも打者を確認しますよね。信じられないです。当然、得点差なんかでセオリーを重視した走塁はできない。狙っているベースのアウトかセーフかで、走るだけなんです。

-勝敗を分けるのは、打つか打たれるかだけなのでしょうか

上原 断言はしませんが、そういう部分が大きい。でも、それだけに打ったり、投げたりの能力はすごい。走塁だって、走るだけならめちゃくちゃ速い。守備も単純な守備範囲やスローイングの強さなんかは、太刀打ちできない。でも、長い戦いでは細かなプレーの差はパワーの前にかき消されてしまいがちでも、短期決戦は違うでしょ。だから日本にはチャンスが大きいと思う。特にバリバリメジャーのすごい選手がいないんだから。

-分かりました。気になるのが、今回は使用球の話題があまり挙がりませんね

上原 手にしてみたけど、日本の使用球よりは滑るけど、メジャー球よりは滑らない。中間ぐらい。小さいとか言われているけど、そんな感じはしなかった。投げてみないと分からないけどね。

-投げてみればいいでしょう。まだ辞めたばかりで投げられるでしょう?

上原 それが肩が痛くて投げられないんです(苦笑)。ボールの解説できなくてすいません!

◆上原の国際大会 大体大時代を含め25試合で12勝0敗2セーブ、防御率1・92と抜群の成績。プロ入り後は03年アジア選手権(兼アテネ五輪予選)から08年北京五輪まで5大会で代表入り。06年WBCでは準決勝の韓国戦で7回無失点と好投するなど、3試合で2勝0敗、防御率1・59。先発の柱としてMVPの松坂(3試合、3勝0敗、防御率1・38)と同等の成績を残した。

◆上原浩治(うえはら・こうじ)1975年(昭50)4月3日、大阪府生まれ。東海大仰星から1浪して大体大進学。98年ドラフト1位で巨人入団。1年目から20勝を挙げ、2度の沢村賞などエースとして活躍した。08年オフにFAでオリオールズ移籍。レッドソックス時代の13年には抑えでワールドシリーズ制覇。大リーグでは4球団でプレーし、18年に巨人へ復帰。19年5月20日に現役引退を表明した。04年アテネ五輪、06年WBC、08年北京五輪代表。187センチ、87キロ。右投げ右打ち。