東京6大学野球の東大は16日、井手新体制が始動した。

1週間のオフを経て、この日から元中日の井手峻新監督(75)が都内の東大球場で指導を開始。まずは非公開のミーティングで「50年間、いろいろと野球を見てきましたが、母校に還元しないと、と思って引き受けました」と所信表明した。

さらに打撃に話が及んだ。「直球と変化球の両方、甘い球を打つにはどうしたらいいか」と技術論を語ったという。具体的な内容は伏せたが「甘い球なら、直球、変化球とも両方、打てるようにならないと。そうしないと、チーム打率2割5分はいかない。結局は投手中心の守りの野球、という話にはなるが、それでは当たり前すぎる。2割5分打てれば、もうちょっと点は取れた」と意図を明かした。

10戦全敗に終わった今年、チーム打率は春は1割8分6厘、秋は1割6分5厘で、ともにリーグ最低だった。まずは、4打数に1回安打を打つことで、得点力アップを目指す。

投手陣については、新戦力の台頭を願った。エース小林大が卒業する。井手監督は「1人で投げきった選手がいなくなれば、誰かがポンと出てくるチャンス」と悲観しなかった。自らの経験がある。東大現役時、2学年上には後にプロへ進んだ新治伸治氏がいた。「僕もそうでした。新治さんがいなくなって、誰がいるんだ? と」。新治氏の後を受け、エースとして活躍した。

「野球の8割は投打」とした上で「これは、こうだという決まったプレーをちゃんとやること。守備、走塁です。投打を底上げして、後の2割(守備、走塁)はしっかり固める」と指導の大筋を描いた。

この日の練習は、ネットスロー、素振りなど、基礎練習が大半。井手監督は学生コーチの指導を見守る時間が長かったが、自ら身ぶりを交え、言葉をかける場面もあった。新主将の笠原健吾内野手(3年=湘南)は「プロを経験された方。プロでコーチもされており、理論的に言葉で伝えていただける。分かりやすいです」と笑顔で話した。

助監督には、81年春の「赤門旋風」の時の主将である大久保裕氏(61)が就任。新体制で連敗ストップ、最下位脱出を図る。