第1段階はクリア! 制球難からの復活を期す阪神藤浪晋太郎投手(25)が4日、沖縄・宜野座キャンプのシート打撃で20年初の実戦形式登板に臨んだ。

打者5人に12球を投げ、2安打1四球2失点という数字以上の収穫を手にした。不調時に目立ったすっぽ抜けや大きく引っかけたボールはゼロ。最速154キロの球速以上に、安定し始めた制球力に可能性を感じさせた。   ◇   ◇   ◇

観客がザワついても、藤浪は顔色ひとつ変えなかった。割れんばかりの拍手で迎えられ、マウンドへ駆ける。南国の日差しに照らされながら、投球練習の1球目からいきなり152キロを計測した。球場全体がどよめく中、本人だけは平静そのもの。見栄えにこだわらず、第1段階の課題クリアだけに専念した。

「球速、球威を課題にしているわけではない。(球速は)出そうと思えば出せると言えば語弊がありますけど、いつでもできるところ。それ以上にもっとやるべきことがあるので」

20年初の実戦形式となったシート打撃。「外角、内角、緩急をあまり気にせず、ある程度、ゾーンに投げられたらと思っていた」。最優先すべきテーマに向けて腕を振った。1人目の打者高山には151キロで左中間二塁打、5人目の坂本にはスライダーで中堅右への三塁打を献上。3人目の近本にはこの日最速154キロを出した後に四球を与えた。それでも「及第点」と自己採点できる材料があった。

昨季は制球難を改善できないままプロ初の未勝利。米国発のトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」が開発した特殊なボールを導入し、投球動作解析も進めた。昨秋の高知キャンプでは山本昌臨時コーチから、手首を立ててリリースの横ブレをなくす方法も習得。教えを胸にオフもフォーム固めに励んだ結果、この日は「つかまえられた(制球できた)ボールが多かった」と言う。

今回は打者5人のうち4人が左打ち。課題とされる右打者へのアプローチを試す機会は少なかったとはいえ、すっぽ抜けや引っかけた球はゼロ。近本へのボール球4個もストライクゾーンから大きく外れてはいなかった。山本昌臨時コーチの「腕が通る位置が安定してきた」という言葉を体現。矢野監督からも「ブルペンで投げている感覚のまま投げられたのは収穫」と一定の評価を与えられた。

シート打撃後は13球のブルペン投球で感覚を確認。次は9日の練習試合・日本ハム戦で20年初実戦を踏む見込みだ。「次回以降はしっかりと『投球』を、緩急をつけたり、内外を投げ分けたい」。開幕ローテ入りに向けて、まずは1歩前進。完全復活へ、信じる道を突き進む。【佐井陽介】

▽阪神福原投手コーチ(藤浪のシート打撃登板に)「悪くないんじゃないですか。課題を持ってやっている。結果も大事だけど、本人がやりたかったことをできたかどうかですから」

▽阪神梅野(藤浪のシート打撃登板を受け)「中(ストライクゾーン)で勝負しようというテーマでやっていた。ボールは良かった。打たれはしたけど、ここから段階を踏んでいく。ベストなのは構えたところにボールが来ること」

▽阪神坂本(藤浪と対戦)「初めの(外角)2球は結構、遠く見えた。あれだけの角度で球速も出ていたと思う。僕がキャッチャーの時にも右バッターに対して、そういう球が投げられると晋太郎もすごい楽になると思うし、武器になる球だと思う」

<藤浪の昨季から今季>

▼初の0勝 昨季の開幕は2軍。唯一の1軍登板は8月1日中日戦。5回途中1失点も8四死球と大荒れで即2軍降格。プロ初の勝利なしに終わった。

▼中継ぎで調整も 10月のフェニックスリーグでは中継ぎで6試合計7回無失点と安定。だが、先発した同26日のハンファ戦で4回無失点も9四球の大乱調。

▼「マサ塾」で 秋季キャンプで、山本昌臨時コーチにチェンジアップの投げ方を伝授された。腕が自然と縦振りになる変化球習得を勧められた。藤浪も「自分の発想が至らなかった角度からアドバイスをもらった」と感激。同17日に紅白戦で2回3安打2四球1暴投と不安定な内容も、右打者への抜け球はなかった。

▼4年連続減俸 12月6日の契約更改では2100万円減の6300万円(金額は推定)でサイン。

▼ドライブライン 12月9日から5日間、沖縄で中日藤嶋らと「ドライブライン・ベースボール」のセミナーに参加。米国から来日した専門家による動作解析などに取り組んだ。

▼梅野が絶賛 1月29日、沖縄の先乗り合同自主トレでブルペン入り。50球を投げ制球力向上をアピール。受けた梅野が「本当にめちゃめちゃ良かった」とほめちぎったほどだった。