ソフトバンク東浜巨投手(29)が復活への兆しを見せた。宮崎春季キャンプ第2クール最終日の9日、初のシート打撃に登板。

打者6人に1安打の内容で、好打者の中村晃からは宝刀シンカーで空振り三振も奪った。昨年6月に右肘手術を受けた元最多勝右腕に輝きが戻ってきた。目指す開幕ローテ入りに1歩前進した。

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東浜は捕手高谷のサインに3度、首を振った。中村晃に対し、フルカウントからの6球目だ。「狙いにいきました。シーズンの中でもああいう場面はあると思うので」。投手としての本能がささやいた。高谷とは直球とカーブで組み立てる打ち合わせだったが「思いつきです。決め球なので、試しに投げてみたいと思った」。予定になかった外角に沈むシンカーを選択し、空振り三振に仕留めた。

確かな復活への手応えを感じさせる1球だった。「勝負勘、野球勘というか。実戦から離れていて手探りだったのに、ああいう場面でひらめきが出てくる。まだ大丈夫だなと思いました」。ブルペンでもあまり投げていなかったウイニングショットは、狙い通りのコースに決まった。

直球の球威も良かった。この時期にして145キロをマーク。「腕は振れている。この時期にあれだけ出ていたら十分。ぼくはキレで勝負するタイプなので」。昨年6月にメスを入れた右肘も「特には何も感じない」と痛みも違和感もなくなった。打者6人に対して1安打は許したが、最後は走者一塁で「ゴロを打たせようと」狙って甲斐を遊ゴロ併殺に仕留めた。「初めての実戦にしては良かったんじゃないかと思う。ある程度、自分のイメージ通りには投げられている」。工藤監督も「ボールの力はあったね。手応えがあるというのは聞いていたので、良かったと思う」と順調な様子に笑顔を見せた。

17年に16勝を挙げて最多勝を獲得したが、今年はチャレンジャーの立場だ。「崖っぷちだと思う。結果を残さないといけないシーズン。自分にハッパを掛けながら、常に前向きにやっていきたい」と言葉には強い決意がにじむ。「1つやっと進んだかなと思います」。千賀との2本柱として期待されながら応えられなかったここ2年の悔しさも胸に、開幕ローテーション入りし、再び先発陣の中心に返り咲く。【山本大地】