18年の全米ドラ1右腕が堂々の1軍デビューを果たした。ソフトバンクのカーター・スチュワート投手(20)が20日の練習試合・ロッテ戦(ペイペイドーム)に1軍初先発し、最速154キロの直球を武器に5回1失点に抑えた。昨年のシーズン途中に加入し、来日2年目の本拠地マウンドで進化した姿を披露。幻の開幕日に、期待の「怪物」が第1歩を踏み出した。

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スチュワートは自ら招いたピンチでギアを上げた。1軍初先発の初回2死満塁。「3人に四球を出して、あの場面は力が入った」。打者菅野をこの日最速154キロの直球で空振り三振に切り、失点を許さなかった。緊張はほぐれ、回を追うごとに調子を上げた。5四球と制球に苦しみながら、5回を3安打5奪三振1失点。「1軍で投げられたことがうれしい。いい球が投げられたし、いい球を投げたときは抑えられることがわかった」。上々の1軍デビューを誇らしげに振り返った。

「怪物」は異国の地で順調にステップアップしている。18年に大リーグ・ドラフト1巡目指名を受けたが、入団合意に至らず、昨年5月に海を渡った。6年契約で常勝軍団に加わった。「去年は3軍で日本の野球を学んだ」。課題だったクイック投法やけん制なども磨き、レベルアップ。2月の春季キャンプでは英語が話せるリチャードに通訳してもらい、同学年のメンバーによる「同期会」に参加するなど日本の環境になじんできた。13日の2軍練習試合・中日戦では6回無安打無失点。つかんだチャンスをモノにした。

投球を見つめた工藤監督は笑顔を見せた。「最初にしては上々の投球だった。楽しみが増えました。またチャンスがあれば見てみたい」と今後の練習試合でも起用する可能性を示した。現状は外国人では先発にバンデンハーク、ムーア、救援にもモイネロ、サファテがいる。1軍入りには高いハードルが設定されているが、「けが人が増えてくれば、戦力としてやってもらう可能性はゼロではない」と、指揮官は戦力として計算した。

周囲の期待にも、スチュワートは冷静だ。「今の目標は2軍で一番のピッチャーになること。そうしたら1軍に呼んでもらえると思う。1日も早く、1軍のファンのみなさんの前で投げられることが楽しみ」。選手層の厚いチームで、地道に結果を残すことを自らに課した。幻の開幕日に、未来のローテーション候補が確かな足跡を刻んだ。【山本大地】

◆カーター・スチュワート 1999年11月2日、米フロリダ州生まれ。エウガリエ高3年の18年に61回2/3を投げ、防御率0・91、128奪三振をマークし、全米高校トップ選手の1人に。同年6月のドラフト会議でブレーブスから1巡目(全体8位)指名を受けたが交渉が難航し、合意に至らず。同年秋から東フロリダ州立短大に在籍。昨年5月に6年契約でソフトバンク入りした。198センチ、101キロ。右投げ右打ち。